海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その2
Japan In-depth / 2017年6月25日 8時0分
本来ならば当初の平成26年3月10日の「海幕における要求性能の検討(要求性能の審議)」において、60Kベースの機体は候補からはずれて然るべきだった。だが、このような現実を無視した空想的な、60Kに有利なように仕様が書き換えられていた。
SH-60Kベースの機体は既存機ではなく、事実上の派生型の開発となる。SH-60Kの装備を下ろせば、汎用ヘリになるわけではなく、データバスなどのコンポーネントなども取り外す必要があり、大改造が必要となる。自衛隊の複数の将官OBはSH-60Kをベースにした機体は既存の機体とはいえないと断言する。
更に申せば、仕様を巡る検討チームの会議では60K改良型優位にするために、60Kのキャビンを拡大したものを開発すべきだという声も上がったという。であれば、尚更「既存機」からは遠ざかることになる。
例えるならば今回の汎用ヘリの調達は引っ越し会社がトラックの調達のようなものだ。当然ながらピアノや机などを運べるトラックが必要だ。ところが海幕の担当者は「安いから」と軽乗用車を最有力候補に選んだのだ。精々手持ちサイズのダンボールが運べるにすぎない軽乗用車が引っ越し会社の「トラック」に最適だろうか。子どもでもわかる話だろう。
平成27年の26日に武居海幕長は始めて仕様が「捻じ曲げられた」報告を寝耳に水で受けることになる。これは渡邊剛次郎防衛部長(当時)が適宜情報を海幕長にあげていなかったことが原因のようだ。これを受けて武居海幕長は60Kの編重を見直すように指導した。防衛省の「特別防衛監察の結果について」には、以下のような記載がある。
「取得経費が安価である小型の機種が有利となる旨の報告内容であったため、海幕長から平成23年の海上自衛隊会議で説明された運用構想との整合を図るよう指導を受けた。その際、海幕長は、海幕関係職員に対して『運用構想上は、例えばMCH-101等の大型機が必要とされていたのではなかったのか。』、『海自として少数機機種運用の負担の軽減など幅広く、防衛構想や海自航空機の防衛力整備にも目を向けた検討が必要である』などと発言した(前述報告書)。これは極めて正鵠を得た指摘、指導であろう。
そして、その後渡邉防衛部長は「海幕関係職員に対して、海上自衛隊会議において説明された運用構想等を踏まえ、今後の方針として、MCH-101の選定を優先することを説明し」、検討チームは「複数回の海幕内での課長級ミーティング及び海幕防衛部長への報告を経て、MCH-101を、選定されることが望ましい機種とし、要求性能の再整理を行った。
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