陰謀説の読み方① 「ロシア疑惑」は事実か?
Japan In-depth / 2017年6月30日 0時20分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米「ロシア疑惑」、決定的証拠はまだ出ていない。
・CNNがトランプ陣営の疑惑報道を間違いと認め謝罪、編集者ら辞任。
・国際情勢では時として「陰謀説」が流布されることがある。
アメリカではトランプ政権に関する「ロシア疑惑」が注視を集める。日本でも主要ニュースメディアがその「疑惑」を大々的に報じる。疑惑の核心は、「2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営がロシア政府機関と共謀して選挙の投票結果を不当に動かした」のかどうか、である。
その疑惑がどうも事実だろうと思わせる状況証拠は多数ある。その一方、その疑惑がどうみても事実だと断じさせる決定的証拠や具体的証拠はまだなにひとつ、出ていない。FBI(アメリカ連邦捜査局)の捜査が昨年7月から始まったのに、まだ確実な証拠は出ていないのだ。捜査が終わらないのだから当然ではあろう。その一方、反トランプ側の主要メディアはトランプ政権を黒とみて、必死の「調査報道」を続ける。だがそれでも証拠は出てこない。
それどころかこの「調査報道」の先頭の一翼を担ってきたCNNが6月23日、「トランプ陣営の有力者がロシア政府関連基金の代表とひそかに会い、共謀を図った」という自社の報道がまちがいだったと認め、撤回した。しかもその誤報を流したCNNの記者と編集者合計3人がさっそく責任をとって辞任したことも発表された。
こうなると、この「ロシア疑惑」が単にトランプ政権への攻撃とその打倒のための政治的な工作である可能性も完全には否定できなくなる。
民主党とニューヨーク・タイムズやCNNテレビなどの側が広げる陰謀説かもしれないのだ。現にトランプ政権側はそうした見解を明言している。トランプ大統領自身が「いわゆるロシア疑惑というのは民主党側の『魔女狩り』だ」と断言しているのだ。
もちろん「ロシア疑惑」がまったくの事実であり、トランプ陣営の不正行為が裏づけられて、トランプ大統領自身の弾劾へと発展する可能性も否定できない。真相はこの時点で闇の中なのだ。
さてその真相への探索はひとまずおいて、この「ロシア疑惑」を契機に国際情勢での陰謀説という現象について考えてみよう。私自身の国際報道での長年の実体験に基づく考察である。
私は新聞記者としてもう半世紀以上も働いてきた。最初は毎日新聞、現在は産経新聞の記者としてそのうちの三十数年を海外で過ごした。国際報道にあたったのだ。
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