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陰謀説の読み方② 陰謀はいつもそこにあった

Japan In-depth / 2017年7月1日 7時0分

陰謀説の読み方② 陰謀はいつもそこにあった

古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・陰謀説の有名なものは、9.11の米同時多発テロ。

・米が非核三原則を守らず核を日本に持ち込んでいたとのスクープで自身も陰謀論に巻き込まれた。

・「IBM産業スパイ事件」も陰謀論で語られた。

 

陰謀とは英語ではconspiracy, 陰謀説はconspiracy theory である。欧米でも陰謀をめぐる論議や指摘は歴史上、長い年月、頻繁に起きて、何度も何度も繰り返されてきた。その意味では陰謀説の本場はヨーロッパであり、アメリカだといえる。

わかりやすい近年の実例としては、2001年9月にアメリカで起きたイスラム原理主義過激派のテロ組織アルカーイダによる同時多発テロの陰謀説がある。

極端な陰謀説は「あのテロ攻撃は実は時のブッシュ政権が仕組んだのだ」という内容だった。「実は特定のユダヤ人集団の陰謀であり、破壊された世界貿易センターにはあの日、ユダヤ人だけはみな出勤してこなかった」という陰謀説もあった。

歴史的に非常に悪名の高い陰謀説の実例としては「シオン賢者の議定書」というのがある。1890年代からロシアで登場し、西欧にも広まった文書である。内容はユダヤ民族が世界征服を計画しているという趣旨だった。いわゆるユダヤ陰謀説である。やがて偽書だと判明した。だがヨーロッパでのユダヤ民族への警戒や敵対を高めるという実際の効果があった。

日本を標的とした「田中上奏文」という陰謀説文書も有名である。

1920年代後半、時の日本の総理大臣の田中義一が中国征服から世界征服までの侵略的な意図を実際の陰謀計画にして天皇に上奏したという趣旨の文書だった。これまた完全な偽造だと判明した。だが中国側はこれを事実として宣伝し、国際社会での反日の勢いを高めることに成功した。

中国では私が北京に駐在した2000年の時点でもこの「田中上奏文」は高校などの歴史教科書に事実として紹介され、教えられていた。

このように陰謀説は欧米での歴史が長いのだが、日本でもその傾向はなかなかのものだと実感させられるにいたった。私自身が陰謀説の標的となり、被害をこうむる破目となったのだ。

私は1981年、当時、所属していた毎日新聞を休職し、アメリカの民主党系研究機関のカーネギー国際平和財団に勤務した。上級研究員という立場での一年間の研究活動の機会を与えられたのだ。その際の研究・調査のテーマは日米安全保障だった。

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