北ICBMが後押しする日本の軍事的立場
Japan In-depth / 2017年7月6日 0時55分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・中露は北朝鮮にとって戦略的パートナー。ミサイル開発の技術供与と資金援助を行っている疑い。
・米朝平和条約締結と日朝国交回復で、金正恩を取り込み中露に対峙させるなど発想の転換必要。
・日本は自衛に専念する軍事指導力をアジアで発揮するべき。
■中露の北朝鮮ミサイル開発への関与
モスクワで会談中の中国の習近平国家主席(64)とロシアのプーチン大統領(64)が4日、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したことを受け、表面的には「北朝鮮を非難する」としながらも、日米ほど懸念する様子が見られなかった。
こうしたなか習氏が、「中露関係は、史上最良の状態にある」「中露は互いの最も信頼できる戦略的パートナーだ」と語ったことが特に注目される。北朝鮮が米大陸部アラスカ州を射程に収める火星14型ICBMの正確かつ精度の高い発射に成功したタイミングで、中露の戦略的協力を強調したこの発言は、地政学的にも歴史的にも非常に重い意味を持つ。
北朝鮮は米露中印に次いで、世界5番目のICBM保有国になった。しかも、そのICBMに小型化した核弾頭を搭載できるようになるのも、時間の問題だ。軍事専門家たちが、「あと10年20年はかかる」と言っていたものを、朝鮮労働党委員長である金正恩(33)は、ほんの2年か3年でモノにしてしまったのだ。
これは、金正恩を使って日米に脅威を与え、極東および西太平洋地域の現状を変更しようと企む中露による高度な技術の供与と莫大な資金援助があったからだとすれば、きれいに説明がつく。中国版あるいはロシア版の全地球測位システム(GPS)を使った複数の軍事用衛星サポート、高出力エンジンの技術文書、信頼性のある大気圏再突入時の耐熱シールドや起爆装置などがそれに当たる。
つまり、北の核ミサイルの正体とは、中露が戦略的に協調して日米の喉元に突き付けた刀なのである。
■トランプ氏の選択肢
こうして、事実ではなく願望に基づくトランプ大統領の習近平頼みや「100日の猶予期間」は、完璧に破綻した。今のトランプ大統領の選択肢は、
①壊れたレコードのように「中国が何とかしてくれる」と強弁し続ける一方、経済制裁強化などで、すでに意味を失った「北の核放棄」政策にすがり続ける。
②中国頼み政策を転換して北朝鮮を核保有国と認め、金正恩が喉から手が出るほど欲しがっている米朝平和条約による体制保証をくれてやる。
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