トランプ政権対北政策「戦略的忍耐」と変わらず
Japan In-depth / 2017年7月29日 18時0分
高橋浩祐(国際ジャーナリスト)
【まとめ】
・北朝鮮、ICBM「火星14」2回目の発射実験を28日夜に実施。
・今回の発射地点は前回と異なり、北朝鮮は機動性・奇襲能力を誇示。
・トランプ政権の対北朝鮮政策は「戦略的忍耐」の燃えかすのようなもの。主導権は完全に北朝鮮に。
■お手上げのトランプ政権
北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信が29日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の2回目の発射実験を28日夜に実施し、「成功した」と報じた。北朝鮮は「米本土全域が射程圏に入った」と誇示している。
軍事、外交の両面で北朝鮮に「最大限の圧力」をかけてきたトランプ政権はお手上げ状況。米国の専門家の間では、トランプ政権の対北政策が効果を上げず、トランプ大統領が強く批判してオバマ前大統領の「戦略的忍耐」と何も変わらないと批判する声も出てきている。
米国防総省(ペンタゴン)は28日、前回7月4日に発射された時とは違い、今回の北朝鮮のミサイルを初期分析段階で直ちにICBMと認定した。
2度目のICBMのこの時期の発射時期については、27日が朝鮮半島の集結から64年を迎え、「終戦記念日」となっていたことから、事前に予想されていて驚きはない。
■発射機動性や奇襲能力を誇示
しかし、今回、北が発射したのは軍需工場が集まっているとされる北韓北部の慈江(チャガン)道・舞坪(ムピョン)里。ここ1週間ほど、事前の弾道ミサイル発射準備活動が報じられた、前回7月4日のICBM発射の北西部の亀城(クソン)ではなかった。北は偵察衛星に事前の準備活動をあえて見せつつ、わかりやすくサッカーで言えば、素早いフェイントをかけた。相手に察知されないミサイル発射の奇襲力や機動性を金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が見せつけた格好だ。
事実、北朝鮮メディアは「最新の実験は、我々の大陸間弾道ミサイルがいつどこからでも驚くべき方法で発射できる信頼性と能力を証明した」と誇示したうえで、「米本土全域がわれわれの射程圏内にあることが裏付けられた」と主張した。金委員長は現地で試験発射を直接指揮したとも伝えた。
■アメリカ東海岸も射程に
北朝鮮の発表によると、今回発射された火星14も前回7月4日同様、通常より高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射された。過去最高高度の3724.9キロまで到達、998キロを飛行して日本海に落下した。飛行時間は40分間。これは米国防総省の初期分析と一致する。
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