シンガポール初女性大統領 予想外の反発
Japan In-depth / 2017年9月24日 20時9分
写真)ユソフ・イサク元シンガポール大統領
出典)シンガポール大統領府
11日に会見したハリマ女史は「結果として無投票になったが私は当選を約束されていたわけではない。シンガポール国民のために最善を尽くすという考えは選挙の有無に関係ない」と意欲を見せた。
民族間の格差、差別解消を狙った政府
名誉職とはいえ大統領に各民族を割り当てるやり方は多民族国家を維持していく上では重要なことで、昨年法律を改正してまでマレー系大統領誕生を目論んだリー首相の思惑も「調和」による政権の安定にある。もともと与党「人民行動党」がほぼ圧倒的多数を議会に占める一党独裁制に近いシンガポールでは、建国の父でもある中国系のリー・クアンユー首相とその一族による世襲に近い支配が続いている。
写真)リー・クアンユー元首相 2002年当時
U.S. Department of Defense, Photo by Robert D. Ward
近年は少数政党、少数民族、少数宗教への特別配慮が選挙や雇用などで配慮され「一党支配」を薄めることで政権基盤の盤石化を図っているが、民族間の格差、差別は残っている。
こうした配慮が今回の大統領選出の背景にあり野党や少数民族系団体からは「特定民族を優遇するのはかえって差別」「投票で選ばれるべきで選挙管理委員会による密室の決定は非民主的」などの声が広がっている。
言論の自由が制限されているシンガポールで唯一、公の場で個人が自由に意見を表明できる、「スピーカーズ・コーナー」では9月16日に大統領選出に不満を抱く市民ら数百人が集まって抗議集会が開かれた。
写真)「スピーカーズコーナー」に指定されている「ホン・リムパーク(Hong Lim Park)」
出典)Wikiwand
現地からの報道によれば、集まった市民は「大統領選出過程がオープンでなく不透明だ」と選出方法への不満を抱いていたという。もっとも「民族や宗教間の問題」はシンガポールにとって非常に繊細で、その対立を煽る発言や言動は法律違反に問われることから参加者の多くは沈黙を守り、報道陣の質問にも本名をあえて名乗らない人が多かったという。
2011年の大統領選挙に無所属で立候補し落選した経験のある政治家タン・チェン・ボック氏はネット上のフェイスブックで「国民は選ばれたハリマ女史にではなく、政府のその選び方にこそ不満を抱いているのだ」と問題点を指摘している。
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