“国歌斉唱不起立”に見る米人種問題の本質2
Japan In-depth / 2017年10月4日 12時0分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・黒人に対する暴力に抗議する活動が全米に広がっている。
・きっかけは黒人を射殺した白人警官が無罪となったことであり、黒人に同情的とされる民主党も手を打たなかった。
・「白人は推定無罪、黒人は推定有罪」というアメリカのDNAが社会に暗い影を落としている。
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米プロフットボールリーグ(NFL)の試合前、選手たちが黒人への暴力に抗議して国歌斉唱の際に片膝をついて起立を拒んだり、互いに腕を組んだりして団結の意思を示している。彼らは、具体的に何に対して抗議しているのだろうか。
■ 黒人を射殺する警官の無罪放免
抗議の激化の直接の引き金は、2011年12月に麻薬取引の疑いによるカーチェイスの末、黒人のアンソニー・スミス氏(享年24)を射殺して殺人罪に問われたミズーリ州セントルイス市警の白人元巡査、ジェイソン・ストックリー氏(37)が、9月15日にセントルイス巡回裁判所の白人判事、ティモシー・ウィルソン氏(69)によって無罪とされたことだ。
写真)ジェイソン・ストックリー氏 出典)twitter: AJ+ @ajplus
これに怒った黒人を中心とするデモ参加者が数日にわたってセントルイスの各所を占拠した。スミス氏射殺を無罪とすることに人々が憤りを覚えたのは、警察無線でストックリー元巡査が「あの車を運転している奴を殺してやる」と発言した録音が残っていたこと、拳銃を所持していなかったスミス氏に対し、ストックリー元巡査が「撃ってくるかもしれない恐れがあった」との言い訳の「証拠」としてスミス氏の車に拳銃を置くという罠を仕掛けたことが明らかになったにもかかわらず、白人判事が「殺人罪に問える十分な証拠がない」としたことだ。
「黒人が白人警官を撃つ恐れがあった」との、いつもの推定有罪のパターンで、正当な手続きを経ない黒人の即時処刑が正当化される一方、白人はどれほど疑いが深くても推定無罪とされる制度設計が、改めて白日の下にさらされた。
しかも、ストックリー元巡査は陪審による裁判を避けて、白人に同情的だとわかっている巡回裁判所での裁きを選んだ。司法エリートは、同じ権力側にいる警察を疑うことはせず、白人警官の不法行為を「チンピラ黒人」が訴えても相手にしないのだ。
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