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カズオ・イシグロの「日本人性」を読み解く1

Japan In-depth / 2017年10月7日 9時8分

ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領(79)は1938年に旧国籍法の下、出生地主義のペルーで生まれ、しかも日本の国籍離脱を行わなかったため現在も二重国籍のままなのである。同じように、そうした条件ならイシグロ氏も二重国籍になれたわけだ。

▲写真 アルベルト・フジモリ元ペルー大統領 1999年 出典)ペルー政府HP

ちなみに、旧国籍法の時代に出生地主義の米国などで日本人の父のもとに生まれた子(特に男子)が、日本国籍を捨てることは、大変難しかった。外国籍取得により日本国内の徴兵制度から逃れる抜け穴を、陸軍省と海軍省が許容しなかったからだ。

生まれたときに日本の領事館に届け出を出さなくても、日本政府の目から見れば、日本人の父を持った子はあくまで日本人であり、国籍離脱するにはまず日本政府に対して出生を届け直し、それから数年の審査を経て許可を待たねばならなかった。

1910年代から1940年代にかけて日米の緊張が高まる時代に、「二重国籍は疑わしい」とする米白人の迫害を受け、国籍離脱が難しい二重国籍の日系人は大変な苦労をした。

イシグロ氏が「日本は二重国籍を許さない」と指摘する裏には、そうした彼の出生前の歴史が横たわっており、「日本人性」の常識は可変であることを示している。「日本人性とは何か」が時代の波に翻弄される様子は、イシグロ文学にも色濃く表れる。次回は、そうした内面を分析してみたい。

(2につづく。全2回)

トップ画像:Kazuo Ishiguro Ill: N. Elmehed. © Nobel Media 2017

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