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「アベノミクスで格差拡大」は本当か?

Japan In-depth / 2017年10月26日 8時34分

さらに厄介なのは、当初所得から税金と社会保険料を控除するなどした再分配所得のジニ係数というのがあって、これを見ると2011年の0.379に対して2014年は0.376とほんのわずかだが、格差が縮小していることが読み取れる。当初所得の格差は拡大傾向にあるが、再分配システムがうまく機能しているということだろう。

ただし、この再分配所得のジニ係数も80年代から上昇し、1999年以降はほぼ横ばい傾向にある。2008年は2014年と同じ0.376だった。つまり、2011年から2014年にかけて再分配所得のジニ係数が小さくなっているからといって、「アベノミクスのおかげで格差が縮小」とまでは言えない。

ちなみに、総務省によるジニ係数も細部での違いはあるが、おおむね似たような傾向を示している。(注2:「平成26年全国消費実態調査」総務省統計局)

次に「相対的貧困率」を見てみよう。安倍晋三首相がよく「安倍政権になって相対的貧困率が改善した」と引き合いに出していた指標である。

具体的には、世帯当たりの可処分所得を低い方から順番に並べ、真ん中の人の額(中央値)の半分(貧困線)より所得が下回る人を「貧困層」と認定し、その割合を示した数値だ。ジニ係数と同じく、厚労省と総務省が別々に調査して、それぞれ独自に発表している。

厚労省が今年6月に発表した「国民生活基礎調査」によると、全人口の相対的貧困率は2012年の16.1%から2015年の15.6%へと減少した。子どもの貧困率も16.3%から13.9%になっている。この数字をもって「改善した」と言うのは間違いではない。(注3:「6 貧困率の状況-表10 貧困率の年次推移」厚生労働省)

ただ、この相対的貧困率にはカラクリがあって、貧困を認定する「貧困線」がどうなっているかを見るとまた違った景色になることがある。実は、この貧困線(可処分所得がこの数値より低くなると貧困とされる)は1997年の149万円以来、ずっと下がり続けていた。つまり、国民全体の可処分所得が減り続けていたということだ。これによって、それまで貧困だった人が“貧困の枠”から外れ、数値が改善するという現象が見られるのだ。貧困線が下がったというのは、むしろ低所得者層が増えたことを意味している。

例えば、2000年から2003年にかけて相対的貧困率は15.3%から14.9%へと減少している。しかしこの間、貧困線も137万円から130万円と7万円減っている。2000年に135万円の等価可処分所得があった貧困世帯は、2003年には所得が同じでも貧困とカウントされない。これで「貧困が改善された」と言えるかどうかは微妙だろう。

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