「アベノミクスで格差拡大」は本当か?
Japan In-depth / 2017年10月26日 8時34分
しかし、一方でこの数字から次のようなことも主張できる。2012年は正社員と非正規雇用者の賃金の差は300万円(非正規の給与は正社員の35.9%)だったが、2016年には315万円(同35.3%)と、正規vs.非正規の“格差”は広がっている。しかも、この間に非正規雇用者の数は1812万人から2023万人と207万人も増えている。アベノミクスで格差が拡大していることの証左ともいえる。(注6:「非正規雇用」の現状と課題【正規雇用と非正規雇用労働者の推移】厚生労働省)
非正規雇用者の実数について「200万人も増えた」と書いた。こう書くと非正規だけがかなり増えたような印象を持つだろうが、この間に雇用者全体の数も増えているので、全体に占める非正規の割合は35.2%から37.5%と「2.3ポイントの増加」となっている。「200万人増」と「2.3ポイント増」では受ける印象がだいぶ違う。このように、実数とパーセンテージを使い分けることでイメージ操作も可能になる。選挙中の安倍首相の演説は、実数とパーセンテージを巧みに織り交ぜ、アベノミクスの“成果”をアピールしていた。
そもそも、こうした統計のほとんどは国勢調査のような悉皆調査(しっかいちょうさ=全数調査)ではなく標本調査だ。結果はあくまでも目安、推定値に過ぎない。
つまり、何が言いたいのかというと、この種の言説は統計数字を“つまみ食い”することによって、いかなる主張も成り立つ可能性があるということだ(したがって、ファクトチェックには馴染まないかも?)。
「格差が拡大した」という立場にたてば、それに沿ったデータを集めることは容易だ。その逆も同じで、根拠がないどころかいくらでもある。枝野代表や安倍首相に限らず、政治家の多くは、こうしたデータの“つまみ食い”によって、プロパガンダ(政治宣伝)をしていると考えた方がいいかもしれない。
注1:「平成26年 所得再分配調査報告書」厚生労働省政策統括官(総合政策担当) http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12605000-Seisakutoukatsukan-Seisakuhyoukakanshitsu/h26hou.pdf
注2:「平成26年全国消費実態調査」総務省統計局 http://www.stat.go.jp/data/zensho/2014/pdf/gaiyo5.pdf
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