急げ兼業規制緩和 福島の医師不足
Japan In-depth / 2017年11月28日 23時0分
上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・福島県南相馬市に位置する大町病院の医師不足が深刻化している。
・解決の糸口は、南相馬市立総合病院から医師を派遣すること。若手医師のなかにはサポート希望する声も。
・しかし、市役所の指示なしでは動けない状況。地方公務員の兼業規制緩和が進む今、近隣病院への医師派遣について対策を。
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■止まらない大町病院の医師不足
福島県南相馬市の青空会大町病院が危機に陥っている。きっかけは唯一の常勤内科医の退職だ(記事はこちら)。この状況を見かねた南相馬市立総合病院の3年目の内科医である山本佳奈医師が、自ら出向を申し出た(記事はこちら)。彼女の獅子奮迅の活躍で、一時的に危機は収まっていた。
ところが12月、2人の非常勤の内科医の退職が決まった。この原稿を書いている11月25日時点で、穴を埋める非常勤医の確保の目途はついていない。これで、内科の患者は山本佳奈医師が一人で診ることになる。
▲写真 大町病院の内科を一人で支えることになる山本佳奈医師 ©上昌広
外来は毎日あり、患者数が50名を超えることもある。これに加え、15~20人程度の入院患者を担当する。さらに健康診断と報告書作成もやらねばならない。これに月に5回の当直が加わる。ベテラン内科医であっても、こなすことが出来ないハードワークだ。
内科医が一人しかいなければ、どんなことがあっても病院を離れることはできない。患者が急変すれば、夜中に呼ばれることもある。こんな勤務が長く続くはずがない。早急に内科の常勤医師、あるいは外来だけでも担当してくれる非常勤医師を確保しなければならない。
しかし、これが難しい。東北地方は、どこも医師不足だからだ。どこに頼んでも「出せる医師はいません」と返ってくる。医師が多い東京の大学病院に依頼すれば、交通費や宿泊費などが割高になる。毎日一人の医師を東京から呼べば、往復の新幹線代・タクシー代・宿泊費で、毎月の出費は200万円程度になるだろう。病院の経営状態を考えれば現実的ではない。内科の非常勤医を確保するなら、近隣の病院から招聘するのがベストだ。
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