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ユネスコ神話崩壊「国連幻想」棄てよ

Japan In-depth / 2017年12月19日 10時1分

「ユネスコが『世界遺産』の名の下に、ユダヤの聖地をもパレスチナだけの聖地だと認定したことは、政治的な扇動だ」

「ユネスコ傘下の人権委員会にシリアを加盟させたことは自国内の平和的な運動参加者を大量に殺害するアサド政権に『人権擁護』の名を与える愚かな行為だ」

いずれも激しい糾弾だった。

ユネスコは今年7月にパレスチナ自治区の「ヘブロン旧市街」を世界遺産に登録した。結果としてイスラエルも同市街をユダヤの聖地とし「神殿の丘」と呼んでいることを無視した。ヘイリー大使はこの世界遺産の決定を「反イスラエルの政治的な扇動」と非難したのだ。

写真)ヘブロン旧市街 出典)UNESCO

しかしアメリカ政府はユネスコからの脱退の後も「非加盟のオブザーバー」という地位を保ち、ユネスコの今後の機構改革などには提言をしていくという。ただしユネスコへの世界最大のアメリカ政府の分担金はもう払わないという。

アメリカ政府はオバマ政権時代の2010年から分担金の支払いを停止してきた。アメリカが主権国家とは認めないパレスチナをユネスコが完全メンバーとして加盟させたことに抗議したためだった。その分担金の遅延分が合計5億5千万ドルにも達していたが、それがもう払われないこととなる。

こうした動きも歴史の皮肉である。ユネスコはアメリカの主導で創設された組織だからだ。ユネスコは各種の国連機関の中でも経済社会理事会の下部機関、その名称どおり、教育、科学、文化の発展と推進を目的とする。その広範な活動の中でも最近、国際的な関心をとくに集めてきたのは「世界遺産」や「世界記憶遺産」の指定制度である。この制度には日本も深くからみ、影響を受けるようになった。

ユネスコは国連本体の創設から1年ほど後の1946年11月に発足した。その設立のためにはアメリカが先頭に立った。現在の加盟国は195ヵ国、そのうち分担金の最大の拠出国はアメリカで、金額全体の22%、第2位が日本で10%ほどとなってきた。だからそのアメリカの離脱は、国連全体にも大きな衝撃波を与えた。

トランプ政権のその動きは「アメリカ第一主義」によるグローバリズムへの反発という乱暴な行動にも映るかもしれない。だがアメリカのユネスコへの不満にはそれなりの歴史や背景がある。だから今回の離脱にも国内では意外なほど理解が示される。

トランプ政権には批判的な民主党シンクタンクのブルッキングス研究所の国連問題専門家ジョン・マッカーサー研究員も「今回のトランプ政権のユネスコ離脱はきわめて現実的な措置であり、政治的な動機だけからの派手な示威ではない」と支持を表明した。

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