変らぬ朝日社説の「思慮不足と独善」
Japan In-depth / 2017年12月26日 9時41分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・トランプ米大統領が「国家安全保障戦略」を発表した。
・同戦略は中ロの軍拡を非難、米と同盟国の軍事力増強の必要性を強調している。
・朝日新聞社説は同戦略を「相も変わらぬ思慮不足と独善」と批判するが、中ロの行動が原因であることには触れない。
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アメリカのトランプ大統領が12月18日に「国家安全保障戦略」を発表した。その内容は中国とロシアがアメリカ主導の国際秩序を軍事力を背景に崩そうとするのに対し、アメリカも「力による平和」の原則で抑止するという骨子だった。アメリカ国内では与党の共和党はもちろん民主党側でもわりに好評の新政策発表だった。
ところが朝日新聞は12日20日付の社説(リンクはWeb版)でこのトランプ政権の新戦略を即座に「相も変わらぬ思慮不足と独善である」と一刀両断に排除した。社説の見出しには「『力の平和』の危うさ」とあった。私はこの朝日新聞の社説こそ「相も変わらぬ思慮不足と独善」だと感じた。以下、その理由を述べよう。
トランプ大統領の公表した「国家安全保障戦略(以下、同戦略と略)」は次のような支柱から成っていた。
・中国とロシアはアメリカ主導で築かれてきた戦後の国際秩序を根本から変革しようと意図して軍事力を強化し、ロシアはすでにウクライナのクリミア地方を奪取し、中国は南シナ海で一方的に領土を拡大し、軍事基地化した。
写真)クリミアとセヴァストポリのロシアとの統一1周年を祝うコンサートでスピーチするプーチン露大統領 2015年3月18日 出典)ロシア大統領府
・中国とロシアは自国の権益の膨張のために軍事力をテコにして他の諸国の主権や領土を侵害している。この動きはアメリカの利益や価値観をも大きく傷つける。インド・太平洋地域ではとくに中国の軍事拡張による他国の主権侵害が顕著である。
写真)中国が軍事基地化を進める南沙諸島 スビ礁 2015年 出典)United States Navy
・中国は全世界でもアメリカに次ぐ第二の軍事強国となり、その軍事力を自国の覇権の拡大に使っている。核兵器も増強し、多様化している。ロシアもアメリカの世界への影響力の削減を進め、アメリカと同盟諸国との分断を図っている。
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