変らぬ朝日社説の「思慮不足と独善」
Japan In-depth / 2017年12月26日 9時41分
・アメリカはこうした中国とロシアの野望を抑えるために軍事的優位に立たねばならず、大規模な戦争への準備も進める必要がある。日本などアメリカの同盟諸国も自国の主権と独立を守るために軍事力を強くしなければならない。
・アメリカは過去数十年、中国の台頭と既成の国際秩序への参加を支援すれば、中国を自由化できるという考え方に基礎をおいてきた。だが中国はその期待とは正反対に他の諸国の主権を侵害するという方法で自国のパワーを拡大してきた。
以上のような同戦略に対して朝日新聞の同社説は冒頭でまず全体を次のように総括していた。
≪ひたすら武力にものを言わせて米国最優先をうたい、経済的な損得に執拗(しつよう)にこだわる――。トランプ大統領のそんな考え方をくっきり映している≫
この「ひたすら武力にものを言わせて」という大前提は主客転倒である。アメリカがいま軍事力強化や抑止力増大という道を選ぶのは、中国とロシアの「ひたすらに武力にものを言わせる」行動があってこその反応なのである。
旧ソ連と現代のロシア、そして中国のまず武力ありきの侵略や膨張の活動実態をまったく伝えずに、非難することもせずに、アメリカ側の防御の対応だけを非難する、というのは年来の朝日新聞のパターンである。この社説もその特徴が顕著なのだ。
同社説は次のようにも述べる。
≪米国をおびやかす中国とロシアとの「競合」に勝つための、現実主義だという。その文面からぬぐえないのは、相も変わらぬ思慮不足と独善である。確かに近年の中ロには、既存の秩序に挑むような行動がめだつ。しかしだからといって、両国を国際的な協調枠組みに引き込む努力が「ほとんど誤りという結果に終わった」と切り捨てるのは短絡に過ぎる≫
同社説はアメリカの同戦略の原因となった中国とロシアの動向については上記のように「米国をおびやかす中国とロシアとの『競合』に勝つための」と記すだけだった。それ以外には「近年の中ロには、既存の秩序に挑むような行動が目立つ」と書くだけである。
同社説は中ロ両国が南シナ海や東シナ海で、そしてクリミアで、どれほどの軍事力の行使や威嚇をしてきたかをまったく伝えていない。とにかくアメリカだけがひとり相撲をしているように描くのだ。中国とロシアの武力にものを言わせる行動があるからこそ、この米側の戦略があるのだ。その因果関係をこの社説は隠したままなのである。
このスタンスの背後には朝日新聞の長年の「反米親中・親ソ連(ロシア)」という傾向が影を広げている。この反米傾向は中国やロシアに優しいオバマ政権時代にはやや後退したが、現実派のトランプ大統領の登場となると、また先祖帰りふうの、アメリカの動きにはとにかく反対というパターンを復活させたようなのだ。
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