トランプ宣言にパレスチナ無反応のわけ
Japan In-depth / 2017年12月30日 0時40分
ところが現地からの興味ある報道が目についた。読売新聞12月24日朝刊の記事だった。見出しは「パレスチナ『蜂起』遠く」「生活優先 デモ参加激減」となっていた。
トランプ大統領のエルサレム首都宣言から半月の時点での現地エルサレムの状況を伝えるルポ記事だった。その総括としてパレスチナ側の抗議運動はまったく盛り上がっていない、というのだ。
なんだ、これでは「パレスチナを先頭とするイスラム勢力がアメリカやイスラエルへの反発をいっせいに高め、中東和平を突き崩す」という一般の予測とはまるで異なるではないか。読売新聞のエルサレム発のその記事の内容をもう少し紹介しよう。
≪(エルサレムに近いパレスチナ側自治区の)ベツレヘムでは12月22日、パレスチナ人の大規模な抗議デモが予想されていた。だが抗議デモに実際に集まったのは約50人と2週間前の1割ほど。数人が治安部隊に投石したが、催涙ガス弾を撃ち込まれ、すぐに退散した。デモに参加した会社員イサ・ズブーンさん(48)は「皆、闘争に疲れてきている。インティファーダ(蜂起)が起きたときの雰囲気はない」と肩を落とした≫
写真)第2次インティファーダ 200年9月28日
出典)Institute for Palestine Studies
おや、おかしいではないか。パレスチナ人たちは自分たちの聖地の帰属をアメリカに否定され、激怒して、猛烈な抗議活動を連日、広め、強め続けているのではなかったのか。この記事を読む限り、そうではないようなのだ。
さらに読売新聞のその同じ記事の内容を点検してみよう。
≪実際、トランプ氏が宣言を行った週の金曜礼拝の日も、多くの人は礼拝後、デモに参加せず、帰宅した。イスラエルの飲食店で働くパレスチナ人の男性(50)は「インティファーダを始めたら、仕事を失い、借金も返済できず、人生が崩壊する。パレスチナ自治政府のために戦おうと思えない」と打ち明けた≫
≪パレスチナ自治区は社会基盤が十分に整わず、通貨はイスラエルのシュケルを使い、電力供給も同国に頼る。経済的な自立につながる産業は育たず、自治区外への農産物販売もイスラエルを経由する形でしか行えない≫
≪テルアビブ大学安全保障問題研究所のコビ・ミハイル上席研究員は、「パレスチナは過去2回のインティファーダで大きな代償を払ったにもかかわらず、何も得るものがなかった。自治政府に対する不満は強く、自らの生活を投げ出してまで蜂起しようという人は少ないはずだ」と指摘する≫
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