トランプによる不安定化加速【2018:中東】
Japan In-depth / 2018年1月1日 17時37分
大野元裕(参議院議員)
【まとめ】
・トランプ政権のエルサレム首都認定や対イラン強硬姿勢が中東を不安定化させる。
・サウジは経済改革推進継続、油価に影響も。
・イスラーム国が支配地域奪還し、反米過激派勢力が台頭する。
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■ トランプ政権の決断による影響
2017年も中東にとって混迷の年となった。継続する内政の不安定や中東域内での対立に加え、トランプ政権誕生に伴う米国発の不安定が加わることとなった。
トランプ大統領による中東に対する介入は、シリア政府による化学兵器使用を断定した上での2017年4月の空爆にとどまらなかった。同年12月には、トランプ大統領は、安保理諸決議により、当事者間の協議の最後に地位が決定されるとされてきたエルサレムをイスラエルの首都と認め、当事者たるパレスチナの反発のみならず、米英仏中露等がこぞってこれを非難し、あるいは域内各国が強い憤りを見せた。
▲写真 エルサレムをイスラエルの首都と認めた文書に署名するトランプ大統領 2017年12月6日 出典:ドナルド・トランプ公式Facebookページ
さらにパレスチナ自治区地域では、カチューシャ弾(注1)の発射、投石やデモが相次ぐこととなり、緊張と不安定が拡大したのであった。トランプ大統領は就任以来、国内の支持者の歓心を買うために、外交分野において、国際法や国際社会の慣習を無視する行動を繰り返してきたが、このエルサレム事案もまた、中部・南部のユダヤ票および伝統的なキリスト教保守層へのアピールと考えられる。
このようなトランプ政権が中東に及ぼす影響は、2018年も継続しそうである。パレスチナにおけるデモ等の動きは、ヒズボッラー等による第三次インティファーダ呼びかけやガザ地区内強硬派による散発的なカチューシャ弾発砲等は見られるものの、自治区政府並びにハマース双方の自制もあり大規模な抵抗運動に発展してはいない。しかし、金曜日ごとに繰り返されている抗議デモに対し、イスラエル側が強硬な姿勢に出たり、自治区政府側が治安権限を有するA地区にイスラエルの官憲が展開する等の事態があれば、問題は一気に拡大する可能性がある。
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