トランプによる不安定化加速【2018:中東】
Japan In-depth / 2018年1月1日 17時37分
■「イラン嫌い」なトランプ政権
エルサレムへの米国大使館の移転問題については、大使館のセキュリティ確保が十分できる用地が見つからない等を理由として先延ばしにすることは十分可能である。が、トランプ政権内にはフリードマン駐イスラエル大使や娘婿のクシュナー上級顧問等、イスラエル寄りとされる要人も少なくない中、大統領の政治的決定によっては、エルサレム問題に火がつく可能性は否定できない。
▲写真 トランプ大統領のイスラエル訪問に同行するクシュナー大統領上級顧問と夫人のイバンカ大統領補佐官(トランプ夫妻後方)2017年5月22日 Photo by Matty Stern / U.S. Embassy Tel Aviv
米トランプ政権内のキーマンには、「イラン嫌い」がそろっている。フリン大統領補佐官やバノン首席戦略官兼上級顧問は政権外に出たが、イラクにおいてイラン製とされるIED(注2)によって部下等を殺害された経験を持つマティス国防長官並びにマクマスター国家安全保障担当補佐官、ムスリムに対して強い対応を主張してきたケリー首席補佐官並びに対イラン強攻策を主張してきたボンペオCIA長官等が今もなおそろっている。
▲写真 マティス国防長官(左)とクウェートのモハメッド・ハリード・アル・ハマド・アル・サバーハ(Mohammad Khalid Al Hamad Al Sabah)防衛大臣(右)2017年12月5 flickr:James N. Mattis DoD photo by Army Sgt. Amber I. Smith
1月中旬にはイランの核合意履行状況の評価が出される予定だが、トランプ政権は核合意そのものではなく前文が履行されていないことまで取り上げて問題視してきており、イランに対する強い姿勢は継続するものと考えられる。北朝鮮情勢の推移にもよろうが、トランプ政権の本命の標的はイランであり、強硬な方向に動き出した際、政権内に歯止めがきかない状況にあることは懸念される。
▲写真 イラン最高指導者 ハメネイ師 Photo by seysd shahaboddin vajedi
■ サウジアラビアの外交
中東域内では、エジプト、シリア、イラクといった伝統的なアラブ大国の相対的な力の後退が見られる中、イラクやイエメン、レバノン等でのイランを中心とするシーア派勢力の伸張が見られてきた。
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