誰も幸せにならぬ決定 エルサレム問題(上)【2018:中東】
Japan In-depth / 2018年1月3日 22時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・トランプ大統領が去年12月、エルサレム首都化宣言実施。
・背景には圧倒的影響力を持つユダヤ・ロビーの存在が。
・移転した大使館は、現在より格段に増すテロの脅威に直面。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=37834でお読み下さい。】
地図でお分かりの通り、エルサレムという都市は、死海とヨルダン川をはさんで東西にまたがっている。紀元前30世紀より続く古都エルサレム、今では旧市街と呼ばれる城壁に囲まれた一角は東側にある。
▲図 イスラエル地図 緑の部分:パレスチナ自治政府(ヨルダン川西岸及びガザ地区) 出典:外務省
以下、便宜上、それぞれ西エルサレム・東エルサレムと呼ばせていただくが、1948年のイスラエル建国以来の領土は西エルサレムのみで、東エルサレムの方は、1967年の第3次中東戦争においてイスラエルが占領し、以降、実効支配を続けているものだ。
西エルサレムは、もともと市街地ではなかったのだが、イスラエルによって都市化された。現在では高層ビルの数や国際会議が開催できる施設の充実ぶりなど、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイに次ぐ、中東第2の都会と呼ばれている。
▲写真 西エルサレム ホーリーランドタワー Photo by Deror avi
これに対して前述のように、東側は旧市街で、古代ユダ王国のエルサレム神殿(ローマ軍団によって破壊され、遺構が有名な「嘆きの壁」である)や、イエスが処刑されたゴルゴダの丘に建てられたとされる聖墳墓教会、それに予言者ムハンマドが昇天した地とされる岩のドームと言った宗教上の重要施設も、ほとんどすべて東側にある。
▲写真 エルサレム 神殿の丘(中央が岩のドーム) Photo by Godot13
▲写真 聖墳墓協会 Photo by Berthold Werner
で、ここから話がややこしくなるのだが、1980年にイスラエル政府はエルサレムを「恒久的首都」と定め、対外的にも宣言したのだが、国際社会はこれを認めていない。それどころか、東エルサレムからの撤退を求める国連安全保障理事会決議まで出されている。国連および日本を含む各国が首都と認定しているのは、地中海岸の港湾都市テルアビブだ。
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