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酷い歪曲とすりかえ 朝日コラム

Japan In-depth / 2018年1月8日 17時55分

これに対し、このテロはアルカーイダの犯行ではなく、アメリカ政府、あるいはユダヤ勢力などによるとする陰謀説は当初から多方面で語られた。だがその証拠が示されることはまったくないまま、アメリカではこの種の陰謀説は無根拠のデマや政治的プロパガンダだと断じられたところで終わっている。

ところが大野記者はこのデマを日本人が「グローバル化や少子高齢化で、自分たちの暮らす社会がうまく把握できなくなっている。その不可解さ、複雑さにうんざりして、わかりやすいストーリーを求めたくなる」から口にするようになったと断じるのだ。

ちょっと待て、である。当のアメリカでは同時多発テロの犯人がアルカーイダだという当局の発表は単純明快であり、真犯人は他にあるとする陰謀論の方がずっと複雑なのだ。

大野記者の主張する「社会の不可解さ、複雑さにうんざりして、わかりやすいストーリーを求める」となれば、むしろ当局の発表を信じればよいのだ。当局の発表が実はウソであり、真犯人は別にいるという説の方がずっと複雑、不可解なのである。

まして日本での「グローバル化、少子高齢化の社会がうまく把握できず、わかりやすいストーリーを求めたくなる」というのならば、9・11テロの犯人はアルカーイダだというアメリカ当局の発表を素直に信じておけばベストなわけだ。それを「複雑さがいやだから、陰謀説を信じる」というのは、「複雑さがいやだから複雑なストーリーを求める」ということになってしまう。そこにも大野記者の主張の支離滅裂さがあるのだ。

大野記者の矛盾は9・11テロの陰謀説の意味を日本に当てはめて「悪者をさがしたくなる。そこに陰謀論や排外思想、フェイクニュースがつけ込む」と断じる点でさらにあからさまとなる。同テロの陰謀説はアメリカでは自国政府を悪者にするのだから、排外思想ではないからだ。たとえ日本人が東京都内の居酒屋でアルカーイダのかわりにアメリカを悪者にしても、排外思想ではないのである。

大野記者は以上のような記述にすぐ続けて以下のように書いていた。

≪でも、日本の社会は簡単につけ込まれるほどヤワだろうか。

言論空間では、「反日」や「国賊」といった排他的な言葉が飛びかっている。(中略)

名指ししやすいだれかを犯人扱いしてすませる陰謀論や排外思想がこね上げるストーリーよりずっとこみいった現実と、それを受け止めている人々≫

この上記の部分がこのコラムの核心であり、本音だろう。「反日」とか「国賊」というのは明らかに最近、朝日新聞への批判で頻繁に使われている言葉だからだ。大野記者は「朝日新聞批判」という点は具体的にはあげていないが、その意図は明白である。朝日新聞に対する「反日」とか「国賊」という表現はコラム記事の冒頭の同時多発テロ陰謀説に等しいと主張しているのだ。朝日新聞批判もデタラメだと言いたい意図がにじんでいる。

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