トランプ暴露本で政権崩壊はない
Japan In-depth / 2018年1月13日 16時29分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・トランプ氏を痛烈に批判する暴露本「炎と怒り」が出版された。
・この本は米国が抱える構造的な問題をトランプ氏個人や政権に矮小化してしまう危険性あり。
・しかし、政権を崩壊させる決定的な役割を果たすことはない。
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「口先だけで実際は何も実行できないツイート大統領」と揶揄されてきたドナルド・トランプ米大統領(71)は、2017年12月に包括的税制改革を成立させ、環境・エネルギーやインターネット、金融などの面で強力な規制撤廃を推し進める一方、今月には連邦政府による大規模なインフラ投資プロジェクトを発表する予定だ。政権は批判を乗り越えて波に乗り始めた様相を見せている。
ところが、トランプ政権は再びピンチを迎えた。ジャーナリストのマイケル・ウォルフ氏が、2016年の大統領選から17年8月のバノン前首席戦略官・上級顧問辞任までの政権の内幕を描いた『炎と怒り』を5日に世に問うたからだ。
▲写真 マイケル・ウォルフ氏 出典:ウィキぺディアコモンズ photo by Andrew Dermont
著者のウォルフ氏は、「私の本は、トランプ氏が(精神的に不安定で)大統領の職務を遂行する能力がないことを明らかにしている」と、トランプ大統領に挑戦状を叩きつけた。
さらにウォルフ氏は、「トランプ氏は大統領に選出されはしたが、その事実は彼が大統領の職務を遂行できる能力の証明にはならない」と畳み掛ける。その筆致は辛辣そのものであり、トランプ氏を含む政権内の人物に使われる形容詞は皮肉と蔑視に満ちている。
初日から全米各地で売り切れが相次ぐなか、「大統領の資格がない無能力なドナルド・トランプと、それを支える愚かな取り巻きたち」の真実を知ろうと、全米の書店には客が殺到。出版社は「前例のない需要」を理由に、1月9日に予定されていた発売日を急きょ前倒しした。アマゾン・ドットコムの本の売り上げランキングでは、トップを維持している。
暴露本が入手できない人たちは電子版を購入しているが、政府や企業の機密情報を公開するウェブサイトのウィキリークスは7日、全327ページの『炎と怒り』のPDF版をまるごと公開してしまった。1月7日現在、ウィキリークスのグーグルドライブから簡単に無償でダウンロードできるようになっている。ウィキリークスは長い間トランプ政権と対立しており、政権を追い込むチャンスと見たようだ。一方、この無償公開は明らかに著作権法に違反する行為であり、騒動が広がりそうだ。
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