北朝鮮の微笑工作 振り返れ「帰国運動」の悲劇
Japan In-depth / 2018年1月22日 11時26分
島田洋一(福井県立大学教授)
【まとめ】
・在日朝鮮人の、北朝鮮への「帰国」は偽計による「誘拐」に限りなく近い。
・「帰国運動」には日本の左翼学者やジャーナリストらも相当な役割を果たした。
・前のめりの宥和姿勢を見せる韓国文政権は、急速に北に取り込まれていくだろう。
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北朝鮮が平昌(ピョンチャン)五輪に参加を表明し、美女応援団や管弦楽団を送り込んでくる構えを見せている。ミニスカートとハイヒールの女性プロパガンダ・バンド「牡丹峰(モランボン)楽団」の派遣も持ちかけているという。露骨なイメージ戦略、安手の悩殺工作である。
一方、金沢市の海岸に漂着した木造船の中から、また新たに7人の北朝鮮男性の遺体が見つかったと1月16日各紙が報じた。北朝鮮当局により、危険な冬の日本海での密漁を命じられた人々であろう。死者が相次いでも気にも留めないのが北朝鮮政権の本質である。
美女を押し立てた宣伝工作の顔と、文字通り「死の船出」を強いる強制収容所国家の実態。このギャップに意識的に目をふさぐことがいかに巨大な悲劇を生むか、1959年に始まった在日朝鮮人の「帰国事業」を例に振り返っておきたい。
刑法226条は、「所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、2年以上の有期懲役に処する」と規定している。横田めぐみさんらの拉致は、典型的な「略取」である。一方、在日朝鮮人の北朝鮮への「帰国」は、一応自由意思に基づいているため「略取」には当たらないが、偽計による「誘拐」には限りなく近いと言えよう。
写真)日本を出港する帰還船
出典)パブリックドメイン 日本政府「写真公報(1960年1月15日号)」より
北を「地上の楽園」と宣伝した朝鮮総連による強引な勧誘はまさに「偽計」であった。「帰国運動」には日本の左翼学者やジャーナリストらも相当な役割を果たした。中でも、日本共産党員で運動体の中心人物でもあった寺尾五郎の北朝鮮見聞記『38度線の北』(1959年)の影響力は大きかったといわれる。この本については、菊池嘉晃氏が重要な指摘をしている(『北朝鮮帰国事業』中公新書)。
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