南相馬の医療崩壊 求められる改革
Japan In-depth / 2018年2月7日 10時32分
私は市民病院しかできないことは、「救急医療」だと思う。この中には一般外科、脳外科、整形外科、循環器内科、小児科などが含まれる。幸い、一般外科は3人、脳外科は6人、整形外科は2人、循環器内科は2人、小児科医は1人の常勤医がいる。さらに、この病院は初期臨床研修指定病院で、最大8名の初期研修医がいる。
私は「救急医療」に特化し、その他の診療科を削減するしかないと思う。内科は、初期研修医と彼らの教育に熱心な指導医を中心に体制を整備し、足りなければ、6名もいる脳外科医にサポートして貰えばいいだろう。
周辺の病院と競合する人工透析や、開業医と競合する診療科は撤退すべきだ。さらに、専門技量を身につけたい若手内科医を強制的に配置して、内科医不足の数合わせをすべきではない。彼らの成長を損ね、数年後には我が身に返ってくる。嫌気がさして、他の地域にでていくかもしれない。南相馬市の医療の発展を願うなら、いまこそ彼らに投資して、専門的な技量を身につけて貰うべきだ。この判断ができるか否かは、及川友好院長と門馬和夫・新市長にかかっている。
写真)及川友好院長
出典)南相馬私立総合病院HP
写真)門馬和夫・新市長
出典)福島県南相馬市HP
病院経営者の中には、自らの失敗を棚に上げ、他者に負担を押しつける人が少なくない。厚労省の審議会の委員の中には「若手医師に地方での勤務を義務化すべきだ」と主張する者までいる。犠牲になるのは、いつも若手医師だ。「医師を派遣して欲しい」と言われ、ダメ病院に派遣される。
やるべきは、若手医師の派遣ではなく、駄目なリーダーを退場させることだ。南相馬市は市長が交代した。今こそ、過去の問題を総括すべきだ。
残念ながら、これが難しい。我が国の病院は情報開示に消極的で、現状が市民に伝わらないからだ。市民の支持がなければ、働かない医師や事務員などの「抵抗勢力」の利権に切り込むことは出来ない。この点で、冒頭にご紹介した五十嵐さんの取組に期待したい。初期臨床拠点病院だけでなく。広く一般病院も調査してもらいたい。
相双地区は、今後も人口が減少する。縮小する町で如何に医療提供体制を維持するか、難しい問題だ。今回、ご紹介したのは、私がみた被災地の医療の現状だ。患者と現場の医師以外の様々な思惑が交叉し、患者と現場が犠牲になっていることがお分かりいただけただろう。私は、被災地と付き合い続けたいと思っている。どうすべきか思案している。
この記事に関連するニュース
-
MR不足が招く医療現場の危機、高齢医師との連携で解決策を
Japan In-depth / 2024年11月26日 23時0分
-
がん治療の現場に異変、深刻化する「医師の偏在」 「医師不足で手術待ち数カ月」の恐怖シナリオ
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 7時10分
-
【若手医師のキャリア満足度と開業志向】約9割の医師が収入の増加や地域医療への関心が「開業」を視野にいれている結果に
PR TIMES / 2024年11月21日 11時0分
-
医学書院の無料WEBセミナー、医療職向け「こどもの腹痛 救急対応」を12月11日(水)に開催!
Digital PR Platform / 2024年11月11日 11時0分
-
小児科を標榜しているのに「小児科専門医」がいない…現役医師が受診前の確認を強く勧める病院サイトの項目
プレジデントオンライン / 2024年10月30日 18時15分
ランキング
-
12025年に思い出が消える!?「ビデオテープが見られなくなる」問題【THE TIME,】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 9時0分
-
2輪島市など震度5弱、住民不安「電柱倒れるのでは」…元日とは別の断層の可能性
読売新聞 / 2024年11月27日 21時54分
-
3東京・文京区のマンション火災で2人死亡、火元は猪口邦子参院議員宅…夫と娘1人と連絡取れず
読売新聞 / 2024年11月28日 1時11分
-
4国民民主・玉木氏、異例の官邸訪問=石破首相に原発新増設を要望
時事通信 / 2024年11月27日 20時9分
-
5出品者に情報提供求める=アマゾンジャパンの独禁法違反―公取委
時事通信 / 2024年11月27日 19時31分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください