Amazon Goに未来はあるか?
Japan In-depth / 2018年2月11日 22時0分
システムはまだ完璧ではないようだ。米経済専門局CNBCのレポーターが取材のためAmazon Goで買い物をした際、ヨーグルトが加算されていないことに気づいた。正直にアマゾン広報に連絡すると、「そのヨーグルトは、弊社の『おごり』でございます」という太っ腹な回答があった。そうした損失は、想定済みであることがうかがえる。
だが、基本的には客の正直さに頼るシステムであるため、アプリにある精算レシートで「買っていない商品を返品」を選び、「取り除く」をタップすれば、たとえその商品を実際に店から持ち出していても、返金される。返品扱いにすることで万引き・窃取ができてしまう弱点が存在するわけだ。
とはいえ、こんなことを繰り返せば、アマゾンのブラックリストにのってしまう。また、商品が高額ではないため、犯人は割に合わない。そこもまた、アマゾンの「想定内」といえよう。
■ 「本命」である理由
Amazon Goには、無人化店舗のライバルがある。アマゾン傘下の高級生鮮スーパー「ホールフーズ(Whole Foods)」のライバルである米最大の生鮮スーパーの「クローガー(Kroger)」や、世界最大の小売チェーンである「ウォルマート(Walmart)」は、顧客のスマホをスキャナー化し、商品をカートに入れながらスキャンして決済まで終わらせることのできるアプリを試験的に提供している。
特に「クローガー」の「Scan,Bag,Go」は、Amazon Goのような小規模なコンビニではなく、大規模スーパー店舗で複雑な会計処理を提供できているところに一日の長がある。
▲写真 「クローガー(Kroger)」の「Scan,Bag,Go」 flickr : Glen Wallace
では、なぜAmazon Goが、それでも本命視されるのか。まず、Amazon Goは客のデータを取ることが一義的な目的で、省力化や待ち時間短縮はボーナスだ。Amazon Goのシステムが業界標準となって外販されるようなことになれば、システムを使う小売業者のデータがアマゾンに筒抜けとなり、あらゆる消費をデータで支配するという同社のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の野望が達成に近づく。
安さと利便性を武器に、「ブランドへの信頼による購買行動」を、「アマゾンという巨大小売システムへの信頼による購買行動」に置き換える壮大な戦略である。オンライン宅配でも実店舗でも、注文の道具がスマートスピーカーでもスマホでもパソコンでも、「買い物といえば、アマゾン」にすることが、ベゾス氏の帝国建設の最終目標であるからだ。Amazon Goはその多角的戦略の重要な構成要素であるため、世界標準になり得ると見られているのだ。
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