イスラム社会の目に映った日本 イスラム脅威論の虚構 その3
Japan In-depth / 2018年2月18日 14時55分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・“黄金郷”、“列強”。古来、イスラム世界は「偏見なく」日本に注目してきた。
・日本では、イスラム系との理由による迫害はなかった。
・日本生き残りへの試金石のひとつは、イスラム系との寛大なつきあい方。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=38520でお読み下さい。】
シリーズ第一回で、日本ではイスラム世界についての知識がまったくと言ってよいほど普及していないことを指摘したが、その逆はどうなのだろうか。つまり、イスラム世界において、日本はどの程度まで知られ、どう見られてきたのか。
驚くなかれ、マルコ・ポーロの『東方見聞録』に「黄金の国ジパング」が登場するより400年ほども早く、イスラム世界の文献に「黄金に満ちた島」が登場する。西暦850年頃に、イブン・フルダーズビフという人物が記した『諸道と諸国の書』に描かれた、「ワークワーク」なる島国が、日本のことではないかと言われているのだ。
▲写真 マルコ・ポーロ 出典:パブリックドメイン
▲写真 クリストファー・コロンブスが手書きの注釈を加えたマルコ・ポーロの「東方見聞録」写本 出典:パブリックドメイン
この人は現在のイラン北部で生まれたペルシャ人だが、当時権勢を誇ったイスラム王朝(アッバース朝)に官僚として仕える一方、ペルシャ、アラブ、ユダヤの商人による交易の歴史と、彼らが伝えてきた諸国の情報を一冊にまとめあげた。それが『諸道と諸国の書』で、アラビア語で書かれた最古の地誌とされる。それによると、ワークワークは黄金と黒檀の一大輸出国で、本国では犬の首輪や鎖までが金で出来ているという。
まさしく「黄金の国ジパング」の先達みたいな描写だが、このワークワークについて、19世紀に活躍したオランダのオリエンタリスト(東洋研究家)であるミヒール・ヤン・ド・フィーイェ(1830〜1909)が「語源は〈倭国〉であろう」とする研究論文を発表するまで、日本と結びつけて考える人は、ほとんどいなかったようだ。ちなみにワークワークの位置は「シーラの東方」とされていて、このシーラも支那(中国大陸)もしくは新羅(朝鮮半島)と推定されている。その東の島国と言えば、間違いなく日本だと言いたいところだが、実は異説も多い。
この記事に関連するニュース
-
欧米では「英雄」でも、南米では「屈辱の象徴」になる…ミセス「コロンブス」MVが示した日本人の危うい国際感覚
プレジデントオンライン / 2024年6月18日 17時15分
-
バフェットの次を行く投資術 衰え始めた「欧米の力」と強まる「非欧米」 ASEAN諸国に成長余力 キリスト教徒と同程度存在するイスラムは無視できない
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月14日 11時0分
-
宗教教育と言語について(下)イスラム圏の教育事情 その5
Japan In-depth / 2024年6月1日 23時0分
-
宗教教育と言語について(上) イスラム圏の教育事情 その4
Japan In-depth / 2024年5月31日 17時0分
-
「日曜アニメ劇場」3週連続で「ルパン三世」TVスペシャル放送 「このすば」金崎貴臣監督作も
映画.com / 2024年5月25日 11時0分
ランキング
-
1政府、水道水のPFAS全国調査 汚染の実態確認へ
共同通信 / 2024年6月22日 21時12分
-
2「平和の光の柱」上空に 沖縄慰霊の日前夜祭 遺族らが黙とう
毎日新聞 / 2024年6月22日 20時4分
-
3東・西日本、大雨警戒=中国と北陸が梅雨入り―気象庁
時事通信 / 2024年6月22日 18時22分
-
4電車運転中にスマホ確認 阪神、乗客の指摘で発覚
産経ニュース / 2024年6月22日 22時2分
-
5別人映像を容疑者と報道 テレビ北海道、高校生殺人
共同通信 / 2024年6月23日 8時29分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)