水素自動車は普及しない
Japan In-depth / 2018年3月11日 11時19分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・日本では将来有望なエコカーは「水素自動車」だとされている。
・しかし、水素自動車はエネルギーコストとインフラ整備、タンク効率においてCNG(天然ガス)自動車に劣る。
・現状では水素自動車は普及しない。
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■ 日本におけるクリーン・エネルギー自動車
自動車はクリーン・エネルギー化が進んでいる。今ではEV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)といった電気自動車が普及期にある。CO2排出量や窒素・硫黄酸化物、微粒子状物質といった有害物質の排出を抑えられるからだ。
日本では「将来は水素自動車」と考えられている。これは燃料電池で電気を作りモータを動かす車だ。純水素を利用する場合、排気は水蒸気しか出さない。またEVとは違い、充電に長時間を要しない。ガソリン車同様に燃料は短時間でチャージできるメリットがある。
だが、水素自動車は本当に普及するのだろうか?
普及しない。なぜなら天然ガス自動車に劣るためだ。現時点ならCNG(コンプレスド・ナチュラル・ガス=圧縮天然ガス)自動車である。将来的には、商船で先行しているLNG(液化天然ガス)エンジン適応車がそれだ。これらは水素自動車同様に充電に時間を要さず環境負荷も低い。
水素自動車は天然ガス自動車には勝てない。以下、その理由としてエネルギーコスト、インフラ整備、タンク密度をあげる。
■ エネルギーコストで劣る水素自動車
▲写真 水素自動車 MIRAI 出典:TOYOTA
水素自動車はCNG自動車に劣る。そのため普及しない。
その第一の理由はエネルギーコストで劣るからだ。
水素自動車の水素はどのようにして作るのだろうか?現時点では天然ガスを熱分解して作る。天然ガスに高温水蒸気を吹き込み、主成分のメタン以下を二酸化炭素と水素に分解して作る。これは無駄が多い。その段階でエネルギーをロスするためだ。
経産省の見積もりでも効率7割である。エネルギー量100の天然ガスからエネルギー量70の水素しか得られない。ちなみに経産省は水素エネルギーを推す立場である。このため、この数字は希望的観測と見るべきだ。実際には更に非効率となるだろう。(*1)
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