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水素自動車は普及しない

Japan In-depth / 2018年3月11日 11時19分

 

▲写真 LNGローリー車 出典:東京ガス

 

■ タンク効率で負ける水素自動車

第三の問題が自動車タンク容量である。

水素は空間効率が悪い。軽油や天然ガスと同じエネルギー量を積むには巨大なタンクを必要とする。その不利から天然ガス自動車に劣る。

軽油は100リットルのタンクで90万kcalのエネルギーを運べる。対して水素は一般的な200気圧タンク100リットルのタンクでは、5万kcalしか入らない。そして天然ガスは同条件では6倍近い28万kcalを運べる。

これは何を意味するか?

水素バスや水素トラックでは荷物を積む場所がなくなる。10t車ではだいたい300リットル内外の燃料タンクをつける。それを200気圧水素タンクで置き換えると6立方メートル近いタンクをつけなければならない。客室や荷台の一部をタンクに当てなければならず、輸送車両としての経済性は減じるのである。

もちろん天然ガス自動車もタンク容積の不利はある。

ただ、それでも水素よりは相当に有利である。同じエネルギー量なら1立法メートルで済む。うまく配置すればシャーシや床下、屋根上におさまる。実際にいすゞのCNGバスはタンクを屋根上に配置している。

 

▲写真 ギガCNG車 出典:ISUZU

その上、実用水素自動車のタンクは更に高額となるデメリットもある。容積不利を覆すためタンクを高圧化しなければならないからだ。実際に今のトヨタのミライは700気圧タンクを使用している。一般的なタンクよりも法外に高圧であり、しかも自動車用に軽く作るため高コスト部品となっている。バス・トラック向けとしての大口径・大容量化は更に厄介になる。

この点でも水素自動車は天然ガス自動車に敵わないのである。

 

■ 水素自動車には出目がない

以上が水素自動車の出目のなさである。

たしかに水素自動車はディーゼルや電気自動車に勝る。環境負荷で前者に優れ、航続距離やエネルギー・チャージの時間で後者に勝る。そのため未来の自動車ともてはやされている。

だが、そこに天然ガス自動車との比較を入れると勝ち目はない。その理由は既述した3つである。その上、当座はCNG自動車は車両価格や保守価格でも有利に立つ。エンジン等は既存技術の延長のため安価だからだ。

もちろん、将来的に燃料自動車が勝つこともあるだろう。例えばアルコール改質水素で動く車なら相当に勝ち目はある。燃料としてアルコールを積んで、それを車の中で分解して水素を作り発電する方式である。それならば話は変わる。

しかし、現状ではCNG車には勝てない。そういうことである。

 

*1

水素の製造、輸送・貯蔵について 資源エネルギー庁 (平成26年4月14日 )

*2 

水素・燃料電池について 平成25年10月 経産産業省(平成25年10月)

*3 

李苑、梁敏「氢燃料電池的春天還会遠嗎」『上海証券報』(2017.11.22)

トップ画像:CNGトラック(ISUZUフォワードCNG-MPI) 出典 ISUZU

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