水素自動車は普及しない
Japan In-depth / 2018年3月11日 11時19分
(下図の備考参照)
▲図 各製造方法のCO2排出量比較 出典:水素の製造、輸送・貯蔵について(平成26年4月14日 資源エネルギー庁 燃料電池推進室)
しかもそのための設備が必要である。コストとしては、プラントの減価償却も必要となる。さらには純水素を供給するには前後に別工程も必要である。その上、人件費や地代も掛かる。
対してCNG自動車は天然ガスをそのまま使える。エネルギーのロスはない。その点で水素自動車よりも有利である。
この状況は燃料電池の効率があがっても変わらない。現用のCNG車はMPIエンジンである。ガソリン・エンジンをベースとしているため熱効率が多少悪い。おそらく30%に届くかどうかだ。
だが、燃料電池がそれを超えるには効率60%近くを必要とする。水素生産の不効率を勘案すれば、CNGと同等の性能を発揮するためには電池効率は最低でも45%を必要とする。水素生産・輸送に関係する諸コストを勘案すれば実際にはおそらく60%近くを叩き出す必要がある。ちなみに今の自動車用燃料電池は効率35%でしかない。(*2)
■ インフラ整備で負ける水素自動車
第二の問題はインフラ整備である。
水素自動車は水素ステーション整備のハードルがある。これは従来なかった設備である。それを各地に整備する必要がある。さらにそこに水素を運ぶ配送網を作る必要がある。水素は作るのも厄介だが運ぶのも厄介である。
▲写真 ENEOS 水素ステーション 出典:Google map
水素自動車普及では、そのコストも見込まなければならない。しかも、現状のステーションの能力は低い。中国の記事では、1日30両にしか吸気できない。1日供給量は水素350kgであり、バス10両と乗用車20両の計30両にしか供給できない。(*3)
対して天然ガス・ステーションの整備は容易である。供給網は世界中に整備されている。都市ガスはカロリー調整された天然ガスである。CNG車でそのまま燃やせる。天然ガス供給地域では、配管末端に圧縮機をつければそのまま天然ガス・スタンドになる。
吸気能力にも上限はない。パイプライン末端なので、供給量の天井はない。パイプライン網から外れてもさほどの問題はない。特に日本の場合、天然ガスは基本的にLNGで供給される。その輸入港は各地方に4-5港はある。そのLNGをLNGローリーに分けて、それを天然ガス・スタンドに運べばよい。ちなみにLNGローリーは将来的にはボイルオフと言われる蒸発損分の天然ガスで動かせる。これも水素に対する有利だ。水素では非パイプライン輸送も面倒である。船や港やローリーからつくらなければならないのだ。
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