ウーバー自動運転車事故は不可避だったのか?
Japan In-depth / 2018年3月24日 12時8分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・米アリゾナ州で自動運転車による世界初の死亡事故が起きた。
・地元警察は「不可避な事故」であることを強調。
・「自動運転車は人間が運転する車より安全」という証拠はまだない。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=39131でお読み下さい。】
■ 結論を急ぐ地元警察
自動運転モードで走行中だった自動運転車が、世界初の死亡事故を起こした。米アリゾナ州テンペで3月18日の夜、横断歩道でない公道で自転車を押しながらわたっていた49歳のホームレスであるイレイン・ハーツバーグさん(49)が、米配車大手ウーバーの自動運転車のオペレーターであるラファエル・バスケスさん(44)が同乗し、時速65キロメートルで高速走行する車にはねられ、死亡した。
興味深いことに、事故を捜査するテンペ警察は早い段階から「不可避な事故」をことさらに強調し、3月21日にはハーツバーグさんがはねられる場面を一部始終とらえた車載カメラの映像を、衝突寸前の瞬間のコマまで公開した。車が減速する様子は記録されていない。シルビア・モイア署長は、「いかなる状況でも、(暗闇で視野が狭いので)こうした衝突を避けることが非常に困難だっただろうことは極めて明らかだ」と強調した。
https://twitter.com/TempePolice/status/976585098542833664
▲公開された車載カメラ映像 出典 テンペ警察
警察はまるで、事故を歩行者の過失に落とし込み、とっとと片付けて自動運転車のテスト走行を早期に再開することを望んでいるような印象さえ与える。そこには、ハーツバーグさんの死が「技術の改善と進歩にとって、避けられない犠牲だった」との本心が見え隠れする。
▲写真 テンペ警察 シルビア・モイア署長 出典 テンペ警察
事実、ウーバーが自動運転車のテスト走行を行っていたアリゾナ州は、ライバルであるカリフォルニア州において公道の自動運転車実験の規制が強化されて以来、自動運転ビジネスを誘致することに熱心だった。将来有望な自動運転分野で高度な人材や研究開発センターを誘致できれば、自動運転規制のノウハウを他州に「輸出」するような、全米をリードする産業に育てることも夢ではない。テンペのマーク・ミッチェル市長は事故後に、「技術の将来性のために、自動運転車の試験運行を支持する」と語った。
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