強制不妊の犠牲者を救済する ワセダクロニクル
Japan In-depth / 2018年4月11日 9時33分
▲写真 杉山文野氏 ©Japan In-depth編集部
■ 性同一性障害特例法
対談後半の話題は、「性同一性障害特例法」。現在日本ではこの法律により、戸籍上の性別取扱を変更する場合、以下の要件を満たすことが必要となっている。
①二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること
②20歳以上であること
③現に婚姻をしていないこと
④現に未成年の子がいないこと
⑤生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
⑥他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
⑤⑥について杉山氏は、手術を望むか否か、子どもを持ちたいか否かの選択は人それぞれであり、「(戸籍上で同性同士の2人が)結婚を見据えた場合に、本当はしたくなかったり、必要性を感じていなかったりする手術をしなければならないのは違うのではないか。」と問題意識を述べた。
渡辺氏も、戸籍上で同性同士の2人が結婚できるようにするためには、必ずしも特例法で対応する必要はないとの認識を示し、「なぜ他のいろいろな選択肢を国が閉ざすのか。“伝統的な家族”像以外を全く認めないというのはどうなのか。」と述べた。
▲写真 ワセダクロニクル編集長 渡辺周氏 ©Japan In-depth編集部
続いて第二部では参加者から登壇者に対して質問がなされ、活発な議論が展開された。まず、「海外で問題になりつつある、例えばインターセックス(注1)の人々に対する強制不妊の問題に将来的に広げていく予定は。」という質問に対し、加地氏は「国家による強制という軸で取材している。その方面にも拡大したいという気持ちはある。まだまだ日本国内の取材でやることが沢山ある。」と答えた。一方、渡辺氏は「取材してもらう。何故なら、拡大という考えではなく、同じ(問題)なのでやらなくてはいけない。」と述べ、多方面から強制不妊の問題に引き続き取り組む考えを示した。
また、渡辺氏は「(海外では強制不妊を)皆ナチスのせいにして安心しているところがあるが、世界中どこでも起きていて、皆に起こり得ることで、実際に起こっていることでもある。日本だけの問題ではない。人類共通の問題。トランプ、プーチンといった政治家が出てきて段々と少数派を排除していく方向に流れている時に、世界中がそれに対してNOと言う横の連携で対抗していかなければならないのではないか。」と述べた。
次に、「マスメディアが何故これまで取り上げてこなかったのか。問題として広まっていかなかったのか。」という質問に対し渡辺氏は「手抜きで縦割りだから。新事実を発見しておらず、縦割りなのでせっかくジャーナリストが問題意識を持っていても死屍累々だ。」と述べ、マスメディアの不作為を批判した。
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