イラク日報隠蔽問題の本質
Japan In-depth / 2018年4月20日 2時45分
ただ防衛省、自衛隊だけを責められない点もある。これらの問題には国会で秘密会議が開催できないことも関係している。委員会などに提出した資料がダダ漏れするのは国会の常識だ。法的に秘密会議が開催できないことはないが、秘密漏洩の処罰が軽く、実際に機能しておらず、このため殆ど秘密会議が開かれることはない。特に防衛や外交で秘密会議が開催できないことは大きな問題だ。日報も機密指定して、秘密会議で議論ができる体制にしておくべきだった。秘密会議が開かれないことは政治の怠慢であるといっていい。
だからといって、防衛省や自衛隊の情報開示の体制を正当化することはできない。彼らは保存されるべき資料の重要性を認識しておらず、また外部の人間は容易に騙せると高をくくっている節がある。その外部の「身内以外」の人間には防衛大臣以下の副大臣、政務官のみならず、事務次官や幕僚長までも含まれる。
▲写真 富士総合火力演習を視察する小野寺五典防衛大臣 出典 防衛省 自衛隊
トップを騙すいくつかの例を挙げよう。東日本大震災に置いて、メルトダウンを起こした福島第一原発を陸自の保有するヘリ型UAV(無人機)、FFRSによる観測が試みられたが、飛行計画まで作ったが観測は行われず、代わりに民間のフジインバック社の固定翼UAV、B型が使用された。
▲写真 フジインバックB2 出典 UAV の安全性について(第57回自動制御連合講演会)
この件に関しては当時の防衛事務次官はキャップクラスの防衛記者クラブの記者たちにその理由を「FFRSの搭載カメラの稼働角度が不十分だったため」と説明した。だがこれは事実では無い。フジインバック社の田辺社長は筆者に対して「当社のB型なんて固定カメラですよ」と明確に否定した。実際に後に国会質問で、防衛省はFFRSが飛ばなかったのは信頼性が低かったからだと答弁している。
▲写真 陸上自衛隊新無人偵察機システム(FFRS)無人機(MA02号機) 出典 クリエイティブ・コモンズ
陸自は東日本大震災後に個人用のファースト・エイド・キットである「個人衛生携行品」を遅ればせながら導入した。イラク派遣部隊はファースト・エイド・キットすら持たされていなかったということになる。ところが防衛省は発表していなかったが、国外用(PKO用)と国内用があった。これは筆者が君塚陸幕長時代に記者会見で質して明らかになった。
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