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イラク日報隠蔽問題の本質

Japan In-depth / 2018年4月20日 2時45分

「個人衛生携行品」PKO用はポーチ込みで8アイテム、対して国内用はポーチ込みで、止血帯、包帯各1個の3アイテムと非常に貧弱だ。対して米陸軍のIFAK IIはアイテム数が20個と充実している。個々の内容物もより実戦的だ。

▲写真 個人携行救急品 出典 平成28年度 防衛省行政事業レビュー外部有識者会合

▲写真 米陸軍のIFAK II 出典 U.S.ARMY

この「個人衛生携行品」、特に国内用が貧弱な件について当初陸幕は、国内は病院が多くあるので問題ないとしていた。だが止血は米軍では通常1分以内に行うように指導している。出血多量で死んだ隊員を病院に担ぎ込んでも生き返らない。

その次の岩田陸幕長時代も筆者はこの問題を追及したが、2016年に中谷大臣、岩田幕僚長は、国内用「個人衛生携行品」は有事に際して全ての隊員にではないが、内容物を補填する計画があると説明した。これは衛生部の説明と同じだが、備蓄はなく、業者の流通在庫を当てにしているという。だがそんなものは「計画」ではない。

しかも当の複数の業者に確認したがそのような話は聞いたことがないと断言した。つまり陸幕衛生部は大臣や、幕僚長を騙して嘘の説明をさせたことになる。これには内局の衛生監も関わっていた疑いがある。いずれにしても組織ぐるみでトップを騙していたことには変わりがない。

そして、平成29年度の補正予算で、陸自はこっそりと国内用の「個人衛生携行品」のアイテムの補充を行っている。

防衛省、自衛隊の隠蔽体質は極めて陰湿であり、内向きだ。筆者は「防衛破綻」(中公新書)を2010年に上梓した。これについて陸自の装備調達の要である陸幕装備部が内部資料としてこの本の「正誤表」を作成した。

筆者はこの「正誤表」の一部分を入手した。ところが正誤の「正」の指摘が間違いだらけだったのだ。恐らくはウィキペディア、下手をすると素人のブログや「2ちゃんねる」あたりを参照としたとしか思えない内容で、軍事のプロによるものとは信じられない内容だった。

【参考:自衛隊の情報源はウィキペディアや2ちゃんねる?(その1)(その2)(その3)】

そこで陸幕広報室を通じて抗議を申し入れた。その結果54カ所の「正誤」の指摘の内、誤りは3カ所だけだったと広報室から謝罪があった(だが、そのうち2カ所は単に国交省との見解の相違であった)。その時に正誤表の全文を公開することを求めたが、拒否された。

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