財務省セクハラ事件 日本的取材慣行見直しを
Japan In-depth / 2018年4月27日 18時24分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・「取材源(情報源)の秘匿」は、死守すべきジャーナリズムの鉄則。
・「夜討ち朝駆け」や「番記者」・「記者クラブ」等の日本的取材慣行は時代に逆行。
・メディアが取材手法を変えない限り、セクハラなどの問題は無くならない。
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報道機関で取材活動に従事する記者(ジャーナリスト)にとって、「取材源(情報源)の秘匿」は、死守すべきジャーナリズムの鉄則である。なぜなら、記者と情報提供者の間に「取材源(情報源)を明らかにしない」という信頼関係があるからこそ、情報提供がもたらされるからである。
取材源(情報源)をばらせば、もう二度と情報は取れなくなるだろう。それどころか、取材源(情報源)の身に危険が迫る可能性だとて否定すべくもない。だからこそ、「取材源(情報源)の秘匿」は記者にとって最も重要なものなのだ。
その上で今回の財務省福田淳一前事務次官の問題を考えてみると、なぜ件の記者は録音テープを週刊誌に提供したのか、という疑問が筆者は解消できずにいる。「取材源(情報源)の秘匿」の原則を破ってネタを他社に提供したら、その記者はもう取材を続けることが出来なくなる可能性が高い。相当な覚悟がなければできないだろう。
まだ若いこの記者は上司に相談したが、自社での報道は無理だと言われたという。筆者も数年間テレビ局報道局の管理職だった。もし自分がこの記者の上司だったらどう判断しただろうと考えてみる。まず、当然現場の訴えを上に上げるだろう。その上で、対応を協議したはずだ。記者が持っている録音テープを自社のニュースで報道する、という判断をしたかどうかは正直わからない。しかし、今回記者がテープを他社に持って行ったということは、組織の判断に納得がいかなかった可能性がある。
この部分はあくまで推測でしかないので、これ以上分析しても意味はないが、一つ言えるのは、次官から度々セクハラにあっていた、と訴えている記者を、再び「サシ」の会食に行かせるのは、組織としてどうなのだろう、ということだ。「サシ」とは、一対一で会うことをいう。誰にも言わず一人で「サシ」の会食に行ったのなら上司は知る由もないが、以前からセクハラの事実を知っていたのなら、「誘いがあっても一人では会うな」と指示するとか、仮にその記者がどうしてもその場に行きたいと言ったとしても、「もう一人記者を同行させる」などの対応をとることはできただろう。
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