財務省セクハラ事件 日本的取材慣行見直しを
Japan In-depth / 2018年4月27日 18時24分
ここで別の観点からこの問題を考えてみると、そもそも「サシ」の取材は取材の在り方としてどうなのか、という問題に行きつく。記者という職業は、「ネタ」を取ってきさえすれば「いい記者」と評価される。いわゆる「スクープ記者」として組織において表彰されるのだ。その手段について問われることはない。先に述べた「取材源(情報源)の秘匿」の原則から、記者がそれを明かすことはまず、ない。上司が知っているのは、その「ネタ元」を部下の記者に紹介した場合のみである。そこにこうした「サシ」の取材が生まれる素地がある。
背景には日本の記者の取材スタイルがある。世界の記者の取材方法に精通しているわけではないが、日本の「夜討ち朝駆け」取材はかなり特殊な方ではないか?それに加え「番記者」システムがある。どちらも、取材対象者と仲良くなり、ネタをもらいやすくするために自然と日本に根付いた。
このシステムは、政治部だろうが社会部だろうが、今回の経済部であろうが、どこの取材現場でも取られている。朝、取材対象者の家に行き、昼間はその人間の記者会見には必ず出席すると共に個人的に追いかける。夜は夜でまた家に行く。招き入れられたら必ず家に上がる。相手が政治家であろうと、官僚であろうと、経済人であろうと、だ。何故ならそれが情報をもらうチャンスになるかもしれないからだ。
それが日本の記者の習性なのだ。一般の人が聞いたら「なんだ、それ?」と思うに違いない。家人がいれば、料理や酒をふるまわれることもある。取材対象者の家や宿舎をはしごすれば、深夜には酩酊状態になることも。そもそも飲まなきゃいい話なのだが、相手に勧められて飲まないのもどうなの、ということで飲む記者が多いだろう。これも聞く人が聞いたら「?」と思うはずだ。
写真)イメージ図
©すしぱく
とにかくそうした取材手法が現実問題ある、ということは知っておいていただきたい。その上で考えると、いくつかの疑問が頭をもたげてくる。「そんな非生産的な取材手法でネタを取ることは今の時代、許されるのだろうか?」という疑問だ。社会全体が「働き方改革」にまい進している時に、こうした取材方法は時代に逆行しているのではないだろうか。
私が記者だったのは1992年から2013年までだが、記者は早朝から深夜までずっと拘束されていた。おそらく社会で最も拘束時間が長い職業の一つだろうが、あまりに非人間的ではないのか。最近では夜回りは止めよう、という動きが新聞社やテレビ局でも出てきたというから、メディアの世界も少しずつ変わっているのかもしれないが。
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