迷走病を根治せよ サッカー日本代表のカルテ その2
Japan In-depth / 2018年4月29日 7時0分
目先の大会で結果を出すことのみにとらわれ、4年先、8年先のワールドカップを見据えて日本独自のサッカーを模索して行こうという意識が、協会上層部にはまったく見られなかったのであある。
今回のハリル監督解任に至る一連のゴタゴタも、同根の問題だと言える。
ハリル監督が代表メンバーに求め続けたことは、「デュアル(1対1の強さ)」、「縦に早いサッカー」ということであった。これはたしかに、今までの日本サッカーに欠けていた要素であり、西野新監督もそこは認めている。フランスでの指導者経験が豊富なハリル(当人はボスニア・ヘルツェゴビナ出身)は、現在かの国で「シャンパン・フットボール」だけではなく、激しいアタックや高速ドリブルでの中央突破が多用されることを、よく知っていたのだろう。
しかしながら、フランスにそうしたサッカーを持ち込んだのは、アフリカ系やカリブ系の黒人選手たちで、彼らの圧倒的な身体能力があってはじめて成立した戦法であること、言い換えれば、日本人に同じ事をやらせようというのは、所詮「無い物ねだり」だということに、新旧の代表監督は気づかなかったのであろうか。
日本代表は確かに、ワールドカップで優勝候補と呼ばれたことなどない。2014年ブラジル大会では「自分たちのサッカー」とやらに固執して惨敗したことも、未だ記憶に新しい。したがって、「日本独自のサッカーなど、20年早い」と言われたならば、反論は難しい。
しかしながら、過去20年ほどの間に築かれてきた、身体能力の差を組織力で埋める戦い方とか、チームに献身する選手の意識とか、日本人の特色を生かしたサッカーの全てが否定されたとも、私には思えないのである。これに加えて、「醜悪な勝利より美しい負けを選ぶ。反則は絶対にしない」といった美学を世界に発信できる「サムライ・サッカー」を確立すべき時期に来ているのではないだろうか。
(続く。その1)
トップ画像:2018 ワールドカップ開催地ロシア・ソチのフィシュト・スタジアム 出典 soccer.ru
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