スーチー氏への失望広がる ロヒンギャ問題
Japan In-depth / 2018年5月13日 2時14分
収容施設を訪れた視察団に対し、ロヒンギャ族の人々からはミャンマー国軍によるレイプ、虐殺、放火などの数々の人権侵害事案に関する訴えが相次いだという。
▲写真 Cox's Bazarの近くに広がるKutupalong難民キャンプ 2017年11月24日 flickr : DFID - UK Department for International Development
大半の人々はバングラデシュ・ミャンマー両政府が合意して進められている「帰還プログラム」に反対を示したという。「ミャンマー国軍が信用できない」「自分たちが住んでいた土地、建物に戻りたいが、家は焼かれ、家族は殺された」などの声が多かったという。
その後視察団はミャンマー入りし、5月1日にラカイン州を訪問した。ラカイン州はロヒンギャ族がもともと数多く居住していた地域で、特にバングラデシュとの国境沿いの村落は仏教徒が圧倒的多数のミャンマーでも少数派のイスラム教徒であるロヒンギャ族が多数を占める地域だった。視察団はミャンマー政府関係者の案内で今後進められる「帰還プログラム」でロヒンギャ族が定住する施設などを視察したという。
ネピドーに戻った視察団の英国連大使ピアース氏はロヒンギャ族に対するミャンマー国軍の数々の人権侵害に関し「きちんとした捜査が必要だ」と述べた。その上で人権侵害事案の捜査を「国際刑事裁判所(ICC)」に委ねることも一案との考えを示した。
▲写真 カレン・ピアース英国連大使 flickr : Foreign and Commonwealth Office
国連をはじめとする国際社会がミャンマー国軍など治安組織によるロヒンギャ族への人権侵害は「民族浄化」であるとの主張を繰り返しているものの、ミャンマー側は一貫して「人権侵害の事実はなく、国軍の行動は(ロヒンギャ族の)テロリストに対して行ったものである」と主張、双方が立場を譲らない状態が続いている。ピアース大使の発言は、その膠着状態を打開する方策の一つとしてICCの介入を示唆したものとみられている。
■ スーチー女史との会談も平行線
視察団はラカイン州を訪問する前日の4月30日にネピドーでスーチー国家顧問兼外相と会談した。会談ではスーチー顧問が「(ロヒンギャ族の)帰還プロセスの手続き促進にはバングラデシュの協力が不可欠である」と強調しながらも現在まで帰還が始まっていないことについては「バングラデシュ側が準備した帰還希望者の書類に不備があったため遅れている。ミャンマー側の受け入れ態勢はすでに整っている」と主張し、バングラデシュ側に責任を押し付ける姿勢をみせた。
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