米大使館エルサレム移転で広がる混乱
Japan In-depth / 2018年5月15日 23時34分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018#20
2018年5月14-20日
【まとめ】
・5月12日イラクで国会議員選挙、若年層の政治不信深刻化。
・5月15または16日からラマダン月開始。
・5月14日イスラエル建国70周年に米国は大使館をエルサレムに移転、今後混乱予想される。
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イスラム暦の先週末12日にイラクで国会議員選挙が行われたことを知っている人は少ないだろう。最近日本では米朝首脳会談の準備に関する報道が過熱し、拉致問題のからみで日朝首脳会談の可能性とか、元総理秘書官や某県知事の証人喚問の話まで出ている。証人喚問のための証人喚問なんて、もういい加減にしたらどうか。
イラクの国民議会は任期が4年、定数は329議席だ。9議席がキリスト教徒やヤジーディー信徒など宗教少数派のため、83議席が女性のため、それぞれ予め確保されているらしい。これも女性や少数派の政界進出を確保する一つの考え方だろう。有権者は約2450万人、今回の総選挙は新憲法下で4回目、初回は2005年12月だった。
前年2004年の前半、筆者はバグダッド勤務だった。当時はあのイラクで民主主義と自由選挙が行われるなんて、考えもしなかった。だから、あの時の興奮は今でもよく覚えている。確か初回の得票率は79.6%、前回2014年の選挙ですら60%もあった。ところが、今回の投票率は44.52%、投票率だけ先進国並みになったということか。
振り返ってみれば、2003年のイラク戦争勃発とサッダーム・フセイン政権追放後、CPA(連合国暫定当局)主導で2004年に暫定議会選挙を実施し、暫定国民議会が発足した。2005年の新憲法成立に伴い、一院制の国民議会が発足した。当時はイラク人も「やればできるじゃないか」と大いに喜んだものだが、今回の結果はどうか。
アバーディー現首相が率いる「勝利」リストが約60議席を獲得して第一党となる見込み。第二党は51議席を獲得するといわれるサドル派・共産党などが集まった「改革へと進む者たち」リスト。第三党には約30議席を獲得する見込みのシーア派民兵「人民動員」幹部が代表を務める「解放」リストだという。あまり変わり映えしない結果である。
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