拉致問題、核ミサイルから切り離せ
Japan In-depth / 2018年5月16日 11時0分
高橋浩祐(国際ジャーナリスト)
【まとめ】
・北朝鮮が拉致被害者再調査を約束した日朝ストックホルム合意に立ち戻れ。
・拉致問題と核ミサイル問題を切り離して北朝鮮と協議せよ。
・外交戦略を見直し、果敢に拉致被害者を取り戻す努力を。
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「悪い癖を捨てない限り、1億年たってもわれわれの神聖な地を踏むことはできない」「日本はすでに解決した拉致問題を持ち出して再び騒いでいる」――
北朝鮮の国営メディアがこのところ、日本批判をぐっと強めている。米中韓露に外交攻勢をかけ、日本批判を展開する北朝鮮に対し、日本政府は今後、拉致問題でどのように対応していくべきか。2つの点を指摘したい。
1つ目は、北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束した2014年の日朝ストックホルム合意に立ち戻ることだ。北朝鮮は翌2015年に再調査報告書をまとめた。しかし、日朝関係筋によると、日本政府はそれを受け取っていない。内容を知っているのに、未だに受け取っていない。その理由としては、拉致被害者が既に死亡しているなど、日本によって厳しい内容が含まれているからだとみられる。
しかし、北朝鮮の報告書を拒絶し続けるばかりでは、拉致問題が今後も何年も前進しないことになりかねない。この際、北朝鮮が提出してきた再調査報告書の内容そのものを「受け入れる」のではなく、それを「検証する」と言って受け取り、日朝交渉を再開させるべきだ。そして、その北朝鮮の報告書に日本独自の反論材料や証拠を突きつけながら、拉致問題の協議を進めていくべきだ。
日本政府のなすべき2つ目の対応として、今後は拉致問題と核ミサイル問題を切り離して北朝鮮と協議することを提案したい。日本政府はこれまでずっと「拉致・核・ミサイル」を一括パッケージにして包括的な解決を目指してきた。しかし、残念ながら、日本には北朝鮮相手に核ミサイル問題をめぐる安全保障絡みの強い外交交渉力はないので、日本人拉致問題は、米国による北との核ミサイル協議よりも、常に後回しになってしまう。北朝鮮に対しても、事実上、米国や韓国による核ミサイル問題の協議を先行させ、日本の拉致問題を後回しにしてもよい国際的な状況を許してしまっている。
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