北朝鮮情勢変動の中でどうみる拉致問題
Japan In-depth / 2018年5月19日 11時0分
トランプ政権のこの積極姿勢はアメリカ歴代政権のなかでも傑出している。トランプ大統領は訪日の際には拉致家族たちと面談し、その悲劇に熱心に聞き入り、事件解決への協力を明言した。
日本の識者の間ではアメリカ側の反トランプの民主党系メディアの受け売りでトランプ政権をただののしるという傾向も強い。だがトランプ大統領の日本人拉致事件の解決への協力に象徴される日本重視の基本姿勢は素直に認めるべきだろう。その日本重視策こそが日本にとって今後の朝鮮情勢の激変でも最有力な支えとなるのである。
拉致問題でのアメリカの役割はこれまでも大きかった。「家族会」と「救う会」の代表が初めて訪米したのは2代目ブッシュ政権が登場してすぐの2001年2月だった。日本では官民ともに拉致事件の完全認知をなお渋る時代だった。
私は当時、ワシントン駐在記者としてアメリカ側との接触がそれまで皆無に近かった訪米団に米側官民の誰と会うべきかなどを舞台裏で助言した。その訪米団の総括の会合に招かれ、一行が拉致の悲劇へのブッシュ政権下でのアメリカ側の理解や同情が日本よりも深いほどなのに勇気づけられた様子を目撃した。
厳寒のワシントンの夜の会合で日本からのワシントン訪問を終え、アメリカ側の関係者との会談で同情や理解を得た日本人拉致被害者の家族たちが、一条の光を得たように安堵する模様を目の前にみて、私自身もこの拉致事件の解決に初めて現実的な希望を感じたことをいまでもよく覚えている。
それから1年後、ブッシュ大統領が北朝鮮を「悪の枢軸」と糾弾した。追い詰められた金正日総書記は2002年9月、長年、否定してきた日本人拉致を認め、5人を帰国させた。
ブッシュ大統領は2006年4月には横田拓也氏と母の早紀江さんをホワイトハウスに招き、懇談した。その後、同大統領は早紀江さんとの会話を「あれほど心を動かされた会合はない」と何度も語り続けた。
▲写真 北朝鮮による日本人拉致問題について横田早紀江らと会談する当時のアメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュ 左に座っている少女は瀋陽総領事館北朝鮮人亡命者駆け込み事件の家族の一人 出典:White House photo by Paul Morse
日本人拉致事件の解決はもちろん日本自身が果たすべき責務である。主権国家が自国民の生命を保護できないままで、どうするというのだ。だが超大国そして同盟国のアメリカが果たしてきた支援も大きかった。いまやその支援がトランプ大統領によって格段に高められたのだ。
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