テロにおののくインドネシア
Japan In-depth / 2018年5月19日 23時0分
■ テロの収監者による暴動
こうした一連の爆弾事件の引き金になったとみられているのが5月8日にジャカルタ南郊デポックにある国家警察機動隊本部にある拘置所で発生した暴動だ。同拘置所にはJADやJATのメンバーなどテロ容疑者が多数拘置されており、155人が警察官の武器を奪い、警察官を人質に取って暴動を起こした。
彼らは収監中のJAT指導者との面会を要求していたといわれ、最終的には5月10日朝に人質を解放、投降して事件は終息したが、警察官6人と収監者1人が死亡した。
事件後、収監者155人は最高度の収容施設であるジャワ中部の離島にあるヌサカンバン刑務所に移送された。国家警察ではスラバヤでの連続爆弾事件はこの暴動鎮圧への報復との見方を強めている。
■ どこへ行くインドネシア
中東のイスラムテロ組織「イスラム国(IS)」にはインドネシアからこれまでに約1000人が参加、うち約半数がすでに帰国して国内でテロを準備しているという。
そういう状況下で14日にはジャカルタ東部のドゥレン・サウィット地区で爆弾テロが発生したとの一部報道があり、日本大使館が「警察はこの情報を否定しており、事実は確認されていない」と在留邦人に連絡する事態も起きている。
このほかスラバヤ市内のショッピングモール20か所が危険で接近しないようにとの情報が流れたものの、偽ニュースと判明するなどインターネットや携帯電話のSMSなどを通じて「正体不明の未確認情報」が溢れ、社会不安を煽る事態となっている。
一方、ジャカルタ中心部の主要交差点には14日、機動隊本部の暴動で犠牲となった警察官6人を追悼する看板と6人の写真が掲げられ、通行人が署名した。
インドネシア各地で政党関係者、宗教関係者などによる集会が開かれ「いかなる宗教もテロを容認しない」「インドネシアは多様性を認める寛容の精神で団結する」など反テロの姿勢を相次いで表明した。
インドネシアはイスラム教以外の宗教も認める「多様性の中の統一」を国是として掲げており、お互いを認めるという「寛容の精神」で多民族、多文化、多言語、多宗教の価値観尊重で団結してきた。
高まるテロの恐怖と社会不安の中でいまその国是と寛容の精神の真髄が試されようとしている。
トップ画像/ジャカルタ市内中心部に設置された犠牲となった警察官の追悼看板 ©大塚智彦
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