米朝関係の行方 カギ握る米政府内主導権争い
Japan In-depth / 2018年6月14日 9時31分
こうした与党内からの圧力も受け、トランプ大統領が、ポンペオ=国務省ラインに仕切らせたのは失敗だったと思い直し、ボルトン側に軌道修正する可能性は充分ある。シンガポールでの記者会見でもトランプは、今後の米朝協議をポンペオとボルトンに任せてあると、2人の名を同時に挙げていた。
そしてボルトン派の態勢固めも進んでいる。例えば私の10年来の知友フレッド・フライツ が5月末、ボルトン氏の首席補佐官兼国家安全保障会議(NSC)事務局長に就任した。ホワイトハウスの中枢にあって政策調整に当たる要のポジションである。
▲写真 フレッド・フライツ氏 出典:FredFleitz.com
フライツは、対北朝鮮、対イラン政策に関する優れた著書がある冷静なハードライナーで、約25年間のCIA生活を経て、ブッシュ(子)政権下の2001年、ボルトン国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)の首席補佐官に起用された。以来ボルトンを「マイ・ボス」と呼ぶ側近中の側近である。
私が「拉致被害者を救う会」副会長の立場でボルトンと最初に会ったのが2003年9月で、フライツはボルトンに紹介された。以来折に触れ意見交換している。フライツは日本人拉致問題に関して議会公聴会で公述人を務めたこともある。ボルトン、フライツの2人をホワイトハウス中枢に持つことは、日本にとって大きな資産と言えよう。
問題は、先に触れたように、ボルトン派と国務省派の主導権争いの帰趨である。北朝鮮側は、米朝首脳会談を「友好ショー」で終わらせ、その後の「実務者協議」で国務省を相手に一歩ごとに譲歩を獲得する戦略を描いていただろう。その第1段階は北の思惑通りに進んだ。
国務省についてはかねて、宿痾としての「顧客病」(clientitis)が指摘されている。交渉相手国の立場に寄り添い過ぎ、相手の代弁人と化してしまう体質を指す。かつてブッシュ政権末期に、ライス国務長官とともに戯画的なまでの対北譲歩を繰り返したクリストファー・ヒル国務次官補が「キム・ジョンヒル」と揶揄された例は記憶に新しい。現在国務省を統括するのはマイク・ポンペオ長官だが、第2のライスとならないか危惧される。
▲写真 クリストファー・ヒル氏 2010年6月21日 出典:Chatham House
ボルトン派は、政権内に重要拠点を得たとは言え、構造的に劣勢である。議会民主党は一致して反ボルトン。共和党においてもボルトンは強硬すぎると批判する勢力が相当ある。ランド・ポール上院議員などは、昨年ボルトンが国務副長官候補に名前が挙がった際、「国務省に近付けてもいけない人物」と与党側ながら強い反対姿勢を示していた。
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