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やはりハッタリだった 米の対北朝鮮先制攻撃

Japan In-depth / 2018年6月16日 10時55分

▲写真 首脳会談に臨む北朝鮮金正恩委員長と米トランプ大統領 2018年6月12日 出典:facebook White House

筆者は昨年3月上旬の早い時期から米国による北朝鮮への先制攻撃が困難であることをいち早く指摘してきた。トランプ大統領が今回述べたように、ソウルは南北の軍事境界線から40㌔しか離れてないが、平壌は150㌔ほど離れている。北朝鮮は戦略上、ソウルを「人質」にとっている形だ。北朝鮮軍は、非武装地帯(DMZ)近くに長射程火砲を重点配備し、その数は多連装ロケット砲など数千門にのぼるとされる。戦争になれば、ソウルには1時間あたり50万発の砲弾が降り、最初の24時間での死傷者が100万人に達するとの推計もある。ソウル首都圏には、韓国総人口の約半分の2500万人が住んでいるが、北朝鮮が警告するようにそこが「火の海」になりかねないのだ。

そもそも北朝鮮を攻撃できるのなら、1994年の第1次朝鮮半島核危機や2002~03年の第2次核危機の際など、とうの昔にやっていたはずだ。では、なぜこれまでやらなかったのか。北朝鮮は既に水爆実験含む核実験6回を行った核保有国。(目を覚ましてほしい、核実験6回、そして、水爆実験ですよ!)核ミサイルだけが問題ではない。北はアメリカ、ロシアに次いで世界3番目の化学兵器保有国。今では天然痘、炭疽菌、ペストなどの生物兵器も保有しているとみられる。

アメリカも様々な被害リスクを考えれば、なかなか攻撃できないはずだ。アメリカにカーボーイ的な役割を期待し、アウトローで「ならず者国家」の北をやっつけてもらいたい気持ちは分かる。しかし、戦争になれば惨事になるのは、トランプ大統領ならずとも、先制攻撃説を流布した識者は認識していたはずだ。また、かりに北朝鮮を制圧しても、その半島処理にはイラクやアフガンをはるかに超える数十万規模の派遣が必要とみられている。現在のアメリカにはそんな余裕はない。

「北朝鮮との間で、戦争で問題が解決すると言っている人間は、事態が全然わかっておらずに基準に達していない人間か、嘘つきかのどちらかだ。戦争なんてシナリオはない」。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は今年3月22日に東京・永田町で行われた新党大地主催の勉強会で、こう指摘した。

▲写真 佐藤優氏 出典:Amazon.co.jp

駐韓米国大使に一時内定していたビクター・チャ氏も今年5~6月号のフォーリン・アフェアーズで、北朝鮮の核問題が米国の予防的攻撃では解決できないことを指摘。この認識が情報機関や国家安全保障会議(NSC)や国務省、国防総省に務めた元当局者の間で広く共有されていると述べていた。

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