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トランプがCVIDを主張しなかったわけ

Japan In-depth / 2018年6月19日 1時7分

トランプがCVIDを主張しなかったわけ

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・金委員長が和平に舵切ったのはトランプ大統領の「最大限の圧力」のせい。

・共同声明は「検証可能で不可逆的な」との表現が抜け「完全な核放棄」と後退。

・トランプ大統領は、北朝鮮核除去の最後の機会を逸した。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40484でお読みください。】

 

2017年の米朝の軍事対決は、危険な段階まで緊張が高まった。北朝鮮側の反応次第では軍事的衝突が起こる可能性が現実味を帯びていた。そのまま軍事衝突に向かうのか、それとも一転して対話の方向に進むのか、今年の金正恩(キムジョンウン)委員長の動向が注目されていた。だが彼は和平に舵を切った。戦争の恐怖に初めて直面したからだろう。トランプ大統領の「最大限の圧力」が勝利を収めたのである。

追い詰められた金正恩は、文在寅政権とIOCの協力のもとで「平昌平和ショ-」を演出し、3月6日には韓国側特使を迎え、「恭順の意」を表すかのように「非核化」カードを切った。そのカードで4月27日の「南北首脳会談」を行い、文在寅政権と共同して「トランプ大統領攻略戦術」を練り上げた。

そして中国を2度も訪問し、その力をバックにして本丸の「米朝首脳会談」に臨んだ。こうしてトランプ米大統領と金正恩委員長による史上初の米朝首脳会談が6月12日シンガポールのカペラホテルで行われたのである。

▲写真 第2回南北首脳会談で挨拶する北朝鮮金正恩書記長と韓国文在寅大統領 2018年5月26日 出典:Korea.net

しかし「和平」に出てきたこの金正恩に対して、トランプ大統領の詰めは想像以上に甘かった。金正恩の「完全な非核化に取り組む」との文言だけで、それまでの「力の平和路線」は影を潜めただけでなく、むしろ金正恩を褒め称えその体制を保証したのである。

▲写真 握手を交わすトランプ大統領、金正恩書記長 2018年6月12日 出典:facebook White House

 

■ CVIDが抜けた米朝共同声明

この会談で両首脳は、北朝鮮に対する「体制保証取り組み約束」と北朝鮮の「完全なる核放棄取り組み約束」を軸とする4項目の共同声明に署名し、新たな関係をアピールした。この声明での最大の特徴は、米国にとって「受け入れ可能な唯一の結果だ」とされていたCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化:Complete Verifiable and Irreversible Dismantlement)がVとIの抜けたCD(完全な核放棄)とだけされたことである。

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