サミット崩壊の危機 アメリカファーストで世界秩序混乱
Japan In-depth / 2018年6月21日 22時23分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・先進国首脳会議(サミット)が崩壊の危機に直面している。
・トランプ大統領、会議終了後、首脳宣言承認しないと表明。
・世界経済減速する中、G7を中心とする結束が弱まるのは問題。
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1975年から40年余にわたって世界の貿易秩序を支えてきた先進国首脳会議(サミット)が崩壊の危機に直面している。危機に陥れているのは、「アメリカ第一」を唱えるトランプ米大統領である。トランプ大統領はサミットが始まる前からアメリカの巨額な貿易赤字に不満を言い募り、多国間の協議を続けてもうラチがあかないとし、二国間の協議で赤字解消を図りたいと言い続けてきた。二国間交渉に持ち込んだらトランプ氏が得意とする二国間のディール(取引)で成功させるという目論見があったのだろう。
今年のサミットは、トルドー・カナダ首相の下でカナダのシャルルボワで開催された。アメリカがEUやカナダへの高関税措置に踏み切った直後に開かれ、通商問題やイランへの経済制裁のほか、トランプ氏が開幕日の朝に突如持ち出したロシアのサミット再加入の是非も議論となった。
▲写真 ジャスティン・トルドーカナダ首相 出典:Justin Trudeau Twitter
議論はアメリカと他の6カ国の激しい対立となったが、最終的にトランプ氏も折れて首脳宣言を出すことで合意し、何とかサミットの分裂は避けられるかと思われた。ところが、サミット終了後の記者会見で議長国のトルドー首相が、「サミットは首脳宣言を出して成功したが、アメリカによる高関税宣言に関してはカナダを侮辱するものだ」と批判もつけ加えた。
▲写真 G7首脳会合(シャルルボワ、平成30年6月8日~9日)出典:G7Canada Twitter
トランプ大統領はサミットに遅れて参加し米朝首脳会議のためサミットを早退してシンガポールへ向っていた。その途中でトルドー発言を聞いて「会議中は従順に聞いていたのに私がいなくなった途端に“侮辱”だというのは弱虫で不誠実だ」とツイッターで批判。首脳宣言は承認しないと表明したのである。トランプ氏のサミット出席は今回が2回目。しかし既に鉄鋼やアルミへの追加関税の発動を表明したり、TPPやパリ協定からの離脱を決めるなど当初から他の6カ国と立場を異にする主張を繰り広げていた。
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