「恐怖」こそカギ 金正恩氏が懇願した会談 米朝首脳会談総括 その2
Japan In-depth / 2018年6月28日 10時14分
古森義久 (ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・北朝鮮側が首脳会談を懇願した事実は致命的に重要。
・金正恩氏の「恐怖」が国是の「核保有」放棄がを約束させた。
・首脳会談をアメリカ側の失敗とする解釈は浅薄。
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米朝首脳会談の結果を判断するには、まずその会談の原因を再認識することが欠かせない。この連載の第1回で説明したとおりである。あえて繰り返すならば、米朝首脳会談の開催を求めたのは金正恩朝鮮労働党委員長の側だという事実の重みである。米朝関係の構造的な変化をまず明示してみせたのは北朝鮮の側だという現実の意味は大きい。
トランプ大統領の側は今年3月に入って、金正恩氏が首脳会談を求めているという情報を韓国政府特使から伝えられるまで、そんな会談への前進の姿勢など、まったくみせていなかった。「最大圧力」と「軍事オプション」の政策標語の下にひたすら北朝鮮が核兵器を放棄することだけを要求していたのだ。
米朝首脳会談へと通じた道では、あくまで金正恩氏の側が韓国政府代表を通じて、アメリカ側に非核化の意向を明示したうえで、会談の開催を求めたのである。
しかもトランプ大統領は会談の開催に合意した後、一度は「そんな会談には応じない」とキャンセルの意を表明した。北朝鮮側によるマイク・ペンス副大統領や、非核化問題でのトランプ政権の政策の中核となるジョン・ボルトン大統領補佐官へののしりが発せられたことに反発して、米朝首脳会談の中止を宣言したのである。
写真)ジョン・ボルトン大統領補佐官(左)とマイク・ペンス副大統領(右)
出典)ジョンボルトンTwitter
北朝鮮側は外務次官の名の下にペンス副大統領を「政治的なバカ」と誹謗した。ボルトン補佐官に対しては「いやらしい人物」というののしりを浴びせた。北朝鮮当局はボルトン氏に向かって「人間のクズ」と悪口雑言を浴びせたこともあった。その誹謗の再現だったのだ。
北朝鮮のこの種の誹謗は正規の会談の前に敵側の攪乱を図る常套手段である。敵側の内部の分断を図る。敵側に過大な期待を抱かせる。敵側に北朝鮮側には大きな譲歩がありそうなことを示唆する。逆に北朝鮮側が公式の会合自体を拒みそうだという印象操作をする。とにかくありとあらゆる手段で相手側の内部を公式の行事の前に揺さぶるという戦術である。
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