国の対応が分けた北朝鮮抑留者の運命
Japan In-depth / 2018年6月29日 7時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・独裁者が不安を高めない限り、拉致被害者解放は実現しない
・北朝鮮抑留者解放で対照的なトランプ政権と文在寅政権
・拉致問題で韓国は北朝鮮とは同調しても、日本との共闘はあり得ない
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日朝関係に動きが出てきた。その関連で、「圧力か対話か」という不毛の問いがある。私は常に、「圧力というボディ・ランゲージで対話すべき」と答えてきた。経済的締め付けと軍事オプションにより、独裁者自身が不安を高めない限り、北朝鮮との意味のある対話は成り立たない。拉致被害者の解放も実現しない。
そのことを再確認させたのが、同じく北朝鮮に拘束された「韓国人」でありながら、米国籍の3人は解放され、韓国籍の6人(あくまで最近の拘束者数。実際の抑留者は遙かに多い)は全く展望が見えない現状である。
5月10日、北朝鮮が釈放した「アメリカ人」3人が、ポンペオ国務長官らと共にワシントン郊外のアンドリューズ空軍基地に降り立ち、「祖国」の土を踏んだ。未明の午前3時にトランプ大統領夫妻、ペンス副大統領夫妻が揃って出迎えるという異例の扱いだったが、帰国風景には終始ぎこちなさと違和感が漂った。
まずトランプ大統領がタラップを登り、最初に現れた最年長のキム・ドンチョル氏(韓国生まれの64才)に親しく話しかけたが、キム氏は対応できず、後から出てきた韓国系米国人の女性が通訳するまで会話が成り立たなかった。
その後、大統領を中心とする一団は、やや離れて待ち受ける記者団の前まで徒歩で移動し、質疑応答となった。
最初にトランプ氏が「3人の本当にものすごく素晴らしい(really incredible)人々」「本当に立派な(really great)人々」を帰国させたと場を盛り上げようと試みたが、記者団の関心はもちろん当人たちの「帰国第一声」にある。
記者から質問を向けられたキム・ドンチョル氏は、簡単な内容にも拘わらず、ここでもやはり英語での受け答えが出来なかった。
苛立った様子の大統領が、記者の質問をキム氏に繰り返し、答を促すなど奇異な光景が続く中、キム氏は終始通訳の助けを借りつつ韓国語で話した。以下にやり取りを引いておこう。
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