変わる東アジアの安全保障 米朝首脳会談総括 その4
Japan In-depth / 2018年6月30日 11時58分
古森義久 (ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・米朝首脳会談は、東アジア全体の安全保障情勢を変化させた。
・その変化とは米朝の敵対的関係、米韓同盟、中国の立場の3つ。
・これらは北朝鮮の非核化の進展に関わらず逆戻りの可能性少ない。
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米朝首脳会談の意味についての分析を続けよう。この会談の最大の主眼だった北朝鮮の非核化については前回に書いた。ここで注目しなければならないのは今回の会談の北朝鮮の非核化を越えての意味である。
この点、先に述べたように、非核化に続く首脳会談の第二の意味として「東アジア安全保障全体の変動」を考えたい。
トランプ大統領と金正恩委員長との会談とその結果をまとめた米朝共同声明によって単に北朝鮮や朝鮮半島の核兵器廃絶に留まらず、日本をも含む東アジア全域の安全保障にも変化の波が生じるのだ。あるいは変化の予兆を生むのだともいえる。
(2)東アジア安全保障全体の変動
米朝首脳会談が明示したもう一つの新潮流は朝鮮半島を中心とする東アジア全体の安全保障情勢の変化である。
北朝鮮の完全な非核化が果たしてアメリカ側が求める形やタイミングで実現するかどうか、保証はない。だがその不透明な展望にかかわらず、すでに起きてしまい、逆転の難しい変化がある。
この変化も三つに分けて考えてみよう。
まず第一の変化はアメリカと北朝鮮の敵対的な関係の質である。
米朝会談の結果、表面的には長年の敵対関係は大幅に薄れた。両国の公式言明に従えば、敵対は消えたとさえいえる。もちろん現実には北朝鮮はなお核戦力も通常戦力もまだ削減はしていない。従来の外部への潜在的な軍事脅威は消えていないのだ。
だが金委員長はアメリカに向かって平和や和解を宣言した。北朝鮮はアメリや韓国にとっては、もはや軍事脅威とはならないと宣言したのだ。この宣言がたとえ結果として虚構、いや最初から意図した虚構だとしても、いま現在の北朝鮮とアメリカとの安全保障面での関係は、たがいに脅威ではなくなったことを誓っているのである。
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