メキシコ左派‟大統領”登場 NAFTA再交渉複雑化
Japan In-depth / 2018年7月29日 18時0分
▲写真 ライトハイザー代表 出典:米通商代表部(USTR)
しかし、NAFTA専門家の多くがほぼ一様に「最大のハードル」と指摘するのは、自動車の「原産地規則」。米国は域内原産比率を現行の62.5%から85%に引き上げ、米国産比率を50%に設定するよう主張、メキシコとカナダは猛反発。その後、米国は幾分譲歩したものの、大きな溝は埋まっていないという。3カ国が協定更新で合意しない限りNAFTAを5年後に終結させるとの「サンセット」条項に関する米国提案をめぐる対立も厳しいようだ。
こうした状況から、NAFTA再交渉の急進展は難しいと見方が専門家の間で依然として強いのも事実。トランプ大統領自身はNAFTA合意を11月の米中間選挙まで待つ意向だとの情報もある。
メキシコのグアハルド経済相は先ごろ「ペニャニエト現政権の任期が終わるまでに妥結はあり得る」とし、11月末までに最終合意成立の可能性を示唆した。また、メキシコの次期政権でNAFTA交渉首席代表に内定しているヘスス・セアデ氏は地元テレビとのインタビューで「再交渉は米中間選挙後に急進展し、新政権発足の12月より前に再交渉がまとまる可能性がある」と語っている。
メキシコではNAFTA年内合意説が浮上する一方、交渉がさらに長期化するとの見方も出ている。メキシコの経済紙「エコノミスタ」は「再交渉が早期にまとまる可能性は低く、2019年までもつれ込むという見方で(メキシコの)多くの経済アナリストの意見は一致している」と報じた。
また、メキシコの有力民間テレビによれば、ロペスオブラドール氏の政党「国家再生運動」(MORENA)幹部は「ロペスオブラドール氏はNAFTA再交渉は新政権の手でやり直したいというのが本音であり、たとえ一度合意ができたとしても再々度交渉を求めるかもしれないし、それが受け入れられなければメキシコからNAFTA離脱を求める戦術もあるかもしれない」と述べたという。
メキシコ次期大統領であるロペスオブラドールが「本質的にアンチ・グリンゴである」(メキシコ政界筋)との指摘は今後のNAFTA交渉の行方を占う上で十分に示唆的である。
※筆者注=「グリンゴ」とは、中南米で白人男性を意味するスペイン語のスラング。メキシコで「アンチ・グリンゴ」と言えば、たいていは反米国人の意味。
トップ画像:アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール次期メキシコ大統領 出典 ロペスオブラドール次期大統領公式サイト
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