日朝合同調査委員会のわな
Japan In-depth / 2018年8月3日 23時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・拉致問題を日朝国交正常化の「障害」と見る勢力から「日朝合同調査委員会」案出る。
・旗振り役は田中均元外務審議官、実働部隊は超党派の日朝国交正常化推進議員連盟。
・合同調査委員会は、実質的には「もみ消し委員会」に他ならない。
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拉致問題を日朝国交正常化の「障害」と見る勢力の口から、「日朝合同調査委員会」案が再び盛んに出だした。
旗振り役は田中均元外務審議官(小泉第一次訪朝時の交渉担当者)で、超党派の日朝国交正常化推進議員連盟(日朝議連。会長は自民党の衛藤征士郎元衆院副議長)が政界における実働部隊を務めている。
▲写真 田中均元外務審議官(後列左から1人目)、英国駐箚特命全権大使林景一(前列左から1人目)、小泉進次郎氏(前列左から2人目)、長島昭久氏(前列右から2人目)ら(2013年5月2日)出典:Foreign and Commonwealth Office
6月21日に、約10年ぶりに開かれた同議連総会では、田中氏と朝鮮総連幹部が講師に呼ばれた。田中氏はメディアに出る頻度も高い。
「安倍首相は北朝鮮への強い姿勢をかざし首相への階段を上ったが、国内に威勢のいいことを言うのが外交じゃない。拉致問題で結果が出ているか」「(日朝が)合同で調査を徹底的にするのが一つの道筋ではないか」「徹底的な調査をせず、生きているに違いないとか死んでいるとか言うのは無責任だ」などと、田中氏の主張の柱にあるのが合同調査委員会である。
外務省で田中氏の後輩に当たる藪中三十二氏も、日朝交渉を担当していた現役時代、繰り返し合同調査委員会案を持ち出していた。日朝議連は7月27日の総会で、日朝首脳会談の早期開催を促す決議を行ったが、この場に藪中氏が講師として呼ばれている。
▲写真 藪中三十二氏 出典:Ann Thomas
安倍首相は事前に日朝議連の幹部と会い、「北朝鮮に高めのタマを投げてほしい」と釘を刺していたというが、結果は北に何ら厳しい要求も突きつけないゆるい棒玉(ぼうだま)となった。
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