兵站軽視という悪しき伝統 昭和の戦争・平成の戦争 その1
Japan In-depth / 2018年8月10日 14時3分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・自衛隊は基本的な部分の個人装備や兵站を軽視する傾向があった。
・ロジスティクスの差こそが前線における物量の差に直結する。
・今の自衛隊は政争の具になっている。
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2011年に『デカワンコ』という刑事ドラマが放送された。トップクラスの警察犬に負けない嗅覚の持ち主ながら、いわゆる「空気を読まない」タイプの女性刑事を、多部未華子が演じた。たしか「怪演」ぶりが評判になったはずだ。
再放送で見たのだが、第1回で銃撃戦が起きる。結果、見事に犯人逮捕となるのだが、上司の係長が、「弾は高いんだから。あとで経理にチクチク言われるのは俺なんだから」などと愚痴を言うシーンがあって、笑ってしまった。もう少し考えて撃ってくれ、というのだ。
もともと刑事ドラマと言ってもコメディだし、日本の警察官はまず発砲しないから、こんなものは笑って済まされる話なのだが、昭和の戦争の総括、そして現在のわが国の防衛を考えると、急に笑えなくなる。
「たまに撃つ 弾がないのが 玉に瑕」
自衛隊では昔から有名な狂歌なのだが、彼らの言う娑婆、つまり一般社会ではほとんど知られていない。たしかに自衛隊は、弾薬が豊富だとはお世辞にも言えず、訓練での弾薬消費量も厳しく規制されていた。税金が節約できて結構ではないか……という話にはならないと思う。
「訓練で流す汗が多ければ、実戦で流す血が少なくなる」と言われるが、これはどちらかと言うと、新兵に対するスパルタ式のしごきを正当化する意味合いがあるようだ。もちろん一面の真実は語っているのだが。一方、
「射撃の腕前は、訓練で消費した弾薬量に比例する」という言葉こそ、真理であると私は考える。
ある程度の社会経験を積んできた読者には、多くを語るまでもないのではあるまいか。仕事であれスポーツであれ、才能以上に大事なのは経験値と練習量なのであって、射撃も例外ではない、というだけの話なのだ。
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