米警戒「一帯一路」の軍事的意図
Japan In-depth / 2018年8月21日 23時14分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・米国防省報告で中国『一帯一路』の軍事意図に警戒表明。
・中国は海軍拠点確保に『一帯一路』構想を戦略的に利用。
・日本も『一帯一路』の軍事的意味に注目し、論じる時だ。
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トランプ政権の国防総省は8月16日、中國の軍事力についての2018年度の年次報告書を発表した。同報告書はその冒頭で中国が軍事力を使って地域的かつグローバルな覇権を求めことが基本戦略だと宣言したうえで、中国がいま推進するインフラ建設の「一帯一路」構想への強い警戒を強調した。この構想が単にインフラ建設という経済的な意図だけではなく軍事がらみの方法で中国の影響力を拡大する重要な戦略手段だとする警戒だった。この点では日本の認識とは大きく異なることが明白となった。
この報告書は公式には「中国の軍事と安全保障の発展についての年次報告書 : Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2018」と題されている。国防総省から議会に送られる同報告書は中国の軍事力増強が顕著となり始めた2000年に米側でできた法律により、その作成と送付と公表が政府側に義務づけられている。
同報告書は要約の冒頭の「中国の戦略とはなにか」という章で、その戦略の目的は「地域的かつグローバルな中国の存在の拡大」だと定義づけ、その手段としてまず「一帯一路」を指摘し,軍事的な要素への警戒を訴えていた。その記述は以下のようだった。
・中国の「一帯一路」構想は軍事的な要素を含んでいる。中国当局はこの構想により他の諸国との強い経済的きずなを発展させ、相手国の利害関係を中国のそれと一致するように組み換え、国際的な場での中国の特殊な問題への対応に対する批判や対決を抑えることを意図している。
・「一帯一路」の投資計画の一部は中国にとっての軍事的な利点を生み出す目的を持っている。中国が軍事面で特定な外国での港の使用を必要とするとき、あるいは膨張する自国の利益をアジアやインド洋に限らず、地中海、大西洋にまで及ぶ海域での海軍の配備保持のために兵站用の拠点を確保しようとするとき、「一帯一路」のプロジェクトを利用するという戦略をすでに立てている。
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